死んで尚の恋が終わる時
「・・・これでよし、と・・・」
・・・それで新一のマンションを出て、自分の住むアパートに戻ってきた蘭はベッドに腰掛けながら携帯を弄り終わり、一段落つかせた言葉とは裏腹に辛そうな表情を浮かべていた。新一からの電話番号やメールアドレスを始めとした一切の連絡を拒否する手続きをし終えたことに。
「うっ・・・ヒック・・・や、やっぱり辛いよぉ・・・光太郎・・・ごめん、やっぱり来て・・・一人じゃ私、我慢出来ない・・・!」
そしてそのまま涙を溢れさせ出しながらも、蘭は携帯を再び弄りながら光太郎へと連絡を取る為に動いていく・・・
・・・蘭が新一と別れるのは前世の死別の時以来二度目の物であるが、前世に関しては命ある者の摂理として寿命が来るまで生きた事に加えて、親の逝去もそうだが同年代の仲が良かった友人達もチラホラ亡くなっていっていたことからそこまで悲痛な気持ちを抱くことはなかった。むしろ涙は流れはしたが、いずれ自分もそこに行くからと笑顔で別れられたくらいだ。そこに夫婦としての絆が断ち切られたといったような悲しみをかきたてるような、マイナスのイメージは一切なかった。
しかし今回は新一もそうであろうが、蘭にとっても行くも地獄で引くも地獄といったような状況であった。だがそれでも自分がここで選ばなければならない選択だと思ったからこそ辛くなろうが別れなければならないと選択し、苦渋の決断をしたものだった。
だが苦渋の決断と言ったように蘭からすれば出来るなら選びたくない選択であったことに加えて、前世の死別とは違い摂理だとか実際は別れてないみたいな考え方も出来ない以上は辛さがこれ以上にないくらいにのし掛かってきた物だった。新一の事を嫌いになって見損なったからというわけではなく、互いが互いにこのまま二人でいれば不幸になるのが確実だからと未だ好きであることを承知しながらそうしたのだから。
・・・蘭自身、こんな選択を出来た事自体が以前とどれだけ自分が違うかを理解はしている。ただ理解こそはしているが新一が好きだという事実に関してはまだ振り切れてないからこそ、蘭は前世を含めれば百を超える年齢のおばあちゃんであっても光太郎に慰めてもらいたいと思って連絡をしたのである。そんな自分が情けないと思いつつも、そうしてもらわなければ気持ちを立て直すことも出来ないからと・・・
「・・・俺は・・・俺は、俺は・・・」
・・・そして一方その頃の新一は頭を抱えながら、ただただ壊れたラジオのように俺はと虚ろに繰り返すしか出来ていなかった・・・蘭の言っている事が全く分からなかった訳ではないが、かといってそれら全てを受け入れられるような考えにはならない。だが肝心の蘭は最早もう二度とよりを戻す気はないのは否応なしに分かったが、それではい諦めますなどと言えるほどに諦めがいいわけでもない・・・そういった理屈と感情におけるでもにしかしといった相反する考えがグルグルと頭の中で巡っている為、自分はどうすれば良かったのかというような思考回路に陥っている為に・・・
・・・そうして以降、蘭と新一はもう会うことはなかった。蘭は光太郎に来てもらう形でしばらくの時間を胸を貸してもらって落ち着く形を取り、涙が納まった後数日は気落ちはしたが度々電話をかけてきた光太郎により次第に元気を取り戻していった。蘭一人では立ち直れたかも怪しかったが、光太郎の姉を想う声により気持ちを落ち着かせることが出来てだ。
だがそのもう一方で新一は外に出ることなどそれこそ必要最低限の事しか無くなって、誰かと顔を合わせる事など出版社の人間以外いなくなると共に・・・その後の未来において探偵になることなどなく、小説家として生涯独身を貫いたまま生きていく事になった。ただ唯一の救いと言っていいかは分からないが、蘭との別れ以降の作品から軽さが消えて評価が高まったというくらいだろう・・・本人にとって不幸からの物であることに加えて、誰もその心中を聞いたことが無いためにどう思っているのかは定かではないが。
・・・前世で繋がっていたからこそ今生でも繋がるとは限らない。人とは移ろうことも変わることも有り得る生き物である・・・故にこそ一人は気付いたのである。変わった自分は変わらない相手に耐えられないということに・・・
END
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・・・それで新一のマンションを出て、自分の住むアパートに戻ってきた蘭はベッドに腰掛けながら携帯を弄り終わり、一段落つかせた言葉とは裏腹に辛そうな表情を浮かべていた。新一からの電話番号やメールアドレスを始めとした一切の連絡を拒否する手続きをし終えたことに。
「うっ・・・ヒック・・・や、やっぱり辛いよぉ・・・光太郎・・・ごめん、やっぱり来て・・・一人じゃ私、我慢出来ない・・・!」
そしてそのまま涙を溢れさせ出しながらも、蘭は携帯を再び弄りながら光太郎へと連絡を取る為に動いていく・・・
・・・蘭が新一と別れるのは前世の死別の時以来二度目の物であるが、前世に関しては命ある者の摂理として寿命が来るまで生きた事に加えて、親の逝去もそうだが同年代の仲が良かった友人達もチラホラ亡くなっていっていたことからそこまで悲痛な気持ちを抱くことはなかった。むしろ涙は流れはしたが、いずれ自分もそこに行くからと笑顔で別れられたくらいだ。そこに夫婦としての絆が断ち切られたといったような悲しみをかきたてるような、マイナスのイメージは一切なかった。
しかし今回は新一もそうであろうが、蘭にとっても行くも地獄で引くも地獄といったような状況であった。だがそれでも自分がここで選ばなければならない選択だと思ったからこそ辛くなろうが別れなければならないと選択し、苦渋の決断をしたものだった。
だが苦渋の決断と言ったように蘭からすれば出来るなら選びたくない選択であったことに加えて、前世の死別とは違い摂理だとか実際は別れてないみたいな考え方も出来ない以上は辛さがこれ以上にないくらいにのし掛かってきた物だった。新一の事を嫌いになって見損なったからというわけではなく、互いが互いにこのまま二人でいれば不幸になるのが確実だからと未だ好きであることを承知しながらそうしたのだから。
・・・蘭自身、こんな選択を出来た事自体が以前とどれだけ自分が違うかを理解はしている。ただ理解こそはしているが新一が好きだという事実に関してはまだ振り切れてないからこそ、蘭は前世を含めれば百を超える年齢のおばあちゃんであっても光太郎に慰めてもらいたいと思って連絡をしたのである。そんな自分が情けないと思いつつも、そうしてもらわなければ気持ちを立て直すことも出来ないからと・・・
「・・・俺は・・・俺は、俺は・・・」
・・・そして一方その頃の新一は頭を抱えながら、ただただ壊れたラジオのように俺はと虚ろに繰り返すしか出来ていなかった・・・蘭の言っている事が全く分からなかった訳ではないが、かといってそれら全てを受け入れられるような考えにはならない。だが肝心の蘭は最早もう二度とよりを戻す気はないのは否応なしに分かったが、それではい諦めますなどと言えるほどに諦めがいいわけでもない・・・そういった理屈と感情におけるでもにしかしといった相反する考えがグルグルと頭の中で巡っている為、自分はどうすれば良かったのかというような思考回路に陥っている為に・・・
・・・そうして以降、蘭と新一はもう会うことはなかった。蘭は光太郎に来てもらう形でしばらくの時間を胸を貸してもらって落ち着く形を取り、涙が納まった後数日は気落ちはしたが度々電話をかけてきた光太郎により次第に元気を取り戻していった。蘭一人では立ち直れたかも怪しかったが、光太郎の姉を想う声により気持ちを落ち着かせることが出来てだ。
だがそのもう一方で新一は外に出ることなどそれこそ必要最低限の事しか無くなって、誰かと顔を合わせる事など出版社の人間以外いなくなると共に・・・その後の未来において探偵になることなどなく、小説家として生涯独身を貫いたまま生きていく事になった。ただ唯一の救いと言っていいかは分からないが、蘭との別れ以降の作品から軽さが消えて評価が高まったというくらいだろう・・・本人にとって不幸からの物であることに加えて、誰もその心中を聞いたことが無いためにどう思っているのかは定かではないが。
・・・前世で繋がっていたからこそ今生でも繋がるとは限らない。人とは移ろうことも変わることも有り得る生き物である・・・故にこそ一人は気付いたのである。変わった自分は変わらない相手に耐えられないということに・・・
END
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