死んで尚の恋が終わる時

「・・・私もこんなことを新一に言いたくなかった・・・けれど何度も何度も私はもうこだわるのを止めようって言ってきたのに、新一はそんなことを聞き入れてくれなかった・・・そんな姿にもう思っちゃったのよ。貴方は事件が起こるのなら自分が解決しなきゃって言ってるけど、そうじゃなくて自分が事件を解決したいし推理をしたいって思ってるのを変えられないんだって・・・」
「そ、それは・・・そんなことは・・・」
「そんなことないって否定出来ないでしょ?というか今までで少しでも私が言ったような事を考えられていたなら、途中でどうにか自分の考えを変えたらいいんじゃないかって考えるくらいは出来てたと思うんだけど・・・一度でも新一はそんなことをしたの?その事件に関しての考え方とか色々今のままでいいのかとかってさ」
「そっ・・・それ、は・・・その・・・」
「・・・」
蘭は悲痛な様子で感じたことを口にしていき何とか新一は否定を返したそうに言葉を探していたが、続けられた問い掛けに盛大に声を詰まらせる様子に更に蘭は悲し気な表情に変わった。明らかに反論の材料が無いという様子を見せられて。






・・・蘭は性格的な事から思い込んだら一直線な考え方をしやすくはあるが、同時に疑念を抱けばそれがどういう形でも解決しなければ気が済まないタチでもあった。故にこそ新一に会ってから一ヶ月半といったくらいになってこのまま新一に恋人的な意味で付き合っていって、また最終的に夫婦に収まってそんな新一の気持ちに付き合っていっていいのかという疑念を抱いてそれらと向き合うことにした。

だがそういったことを考えていくにつれて出てくるのはやはりというか、必然的にそんな気になれないという考えばかりであった。何しろそもそもからして蘭はこうしてはどうかと勧めの言葉を出してきたのに、出てきたのはその言葉に頷けないという類いの物でしかなくて将来的にその態度が是正されるなどと見込めない物だったのだ。これで将来的には大丈夫になるなど、楽観的に物を見るなどと簡単に言えることではないのは確かだ。

そしてそうなってくると新一の魅力だと思っていた部分が、逆に不快な部分という感じかたになっていくものだ・・・あばたにえくぼという言葉があってこれはあばたという顔に出来た出来物ですらえくぼだと好きだから錯覚してしまうという好意から来る物であるが、もしその好意が無くなってしまえばどうなるかと言えば・・・普通に考えるならあばたの度合いが酷ければ酷いほどに、拒否反応を起こすのが残酷なようだが当然の物となるだろう。人間という物は表面上に見える汚い物は出来る限りは避けたいと思う生き物だ。

それに加えて恋は熱病に例えられやすい物であってよく話でもあれだけ好きあっていたのにこんな一面を見た瞬間に恋が冷めたというような事はよくあるものだが、元来恋とは熱しやすく冷めやすいとよく言われている物だ・・・それが前世では冷めずにずっと続いたのは何故かと言えば、新一の周りでずっと事件が起き続けていたからに他ならなかった。冷める間もなく事件が起き続けていき、冷めようとしたらまた惚れ直すという熱が再投入されるということが。

だがそれもこの世界に生まれ変わってから蘭は事件に関わることはなくなった上で、新一もそうなったばかりか事件を望むかのような事ばかりを口にして行く姿は熱が冷めるばかりか、冷水をその都度都度ぶっかけられるかのような物だ。そんなことが起きてきたならばこそ、蘭も恋心が冷めていくのも当然と言えるだろう。

しかしそれでも完全に諦めきれないというか、辛そうな気持ちで別れを切り出すくらいには想いは蘭にはまだある。蘭は事実を前にしたからと言ってはいそうですかと全てを切り替えられる程、理屈で物事を考えられないタイプだ・・・なのにそうして別れを切り出したのには、明確な理由があった・・・それは・・・









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