死んで尚の恋が終わる時

・・・最初こそは喜びを押し隠せずに新一に抱き付いてしまった蘭だが、新一のマンションから出た時には複雑極まりない心境になった。ただそれでも新一に再び会えた事が嬉しいという部分は確かに存在していた為、度々蘭は新一と連絡を取ったり会うようにしていった・・・それでそうして過ごす内に、二ヶ月程の時間が経ったのだが・・・



「新一・・・もう別れましょう・・・そしてもう、これからはずっと離れて会わないように生きていきましょう・・・」
「・・・え・・・?」
・・・新一のマンションにて、対面式に座る二人。
そこでうつむきながら決して冗談とは言えない緊迫感を持って別れを切り出した蘭に、新一は理解が出来ないとばかりの声を漏らすしかなかった。何を言われているのかというよう。
「・・・何でって言いたそうだし、新一の性格的に何も理由を聞かずにそんなことなんて認められないってなるのは分かってるから理由を話すけど・・・単純に言うともう貴方が変わらないって思ったからよ。色々な意味でね」
「い、色々ってなんだよ・・・?」
「こうしてまた私達は出会えた訳だけど、貴方は私から会いに行くって連絡はしても連絡はしてくれなかったじゃない・・・もっと言うならどこかに行こうなんて言い出すことなんてなくて、ここに来てもご飯食べに行くとか買い物に行かないと何もないって時だけしか外に出ようなんて言わなかったし・・・」
「そ、それは仕方無いだろ・・・俺には小説を書くための時間が必要なんだからよ・・・」
そんな新一へと蘭はまっすぐ視線を向けて理由についてを話していくのだが、その中身にすぐに蘭へと理解してくれと言わんばかりの気まずげな声を漏らす。






・・・新一に対する複雑な想いはあれどもこの二ヶ月の間で蘭は度々会いたいというような事を連絡して住む場所へと向かっていった。この連絡ということに関しては以前の一軒家だった工藤の家と違ってオートロックタイプのマンションに住んでいる事から気軽に家に入ることが難しくなったことや、出版社の担当が来ることがあるから連絡無しで来るのは止めてほしいと新一から言われたからだ。

だがそうして蘭が連絡をして頻繁に新一の元に行くのに対して新一から蘭に会いたいと連絡をしてくることもなかったし、ましてや自分から外出を切り出すことなど食事に買い物をするためにといった理由以外に無かった。

これに関しては今新一が言った小説を書くためという理由に関しては嘘ではないとは蘭も理解はしているが・・・それでも小説を書かなければ締め切りに間に合わないという程に時間がないといったことはないどころか、むしろ大学も行けた筈なのにもう自分の能力なら大学に行く理由などないと言って日中の時間を小説の作成にあてている上に、その作成スピードが出版社の担当者から他の作家と比べても滅茶苦茶早いと誉められていると言われたと自信を覗かせた笑みを浮かべた姿に・・・時間がないというのはほぼ建前であって、他に時間を取りたくないのだという姿勢があると蘭は見たのだ。

そして更に言うなら新一は蘭なら分かってくれるだろうというか、仕方無いなみたいな事を言ってジト目を向けた後にらしいからいいかみたいな感じに苦笑を浮かべるといった顔を浮かべるだろうとの、甘えとも言える考えがあると見ていた・・・事実として前世でなら新一がやけに事件に巻き込まれたりして自分の都合を押し通してきたことにそんな感じになっていただろうが、今生では新一のそんな裏事情はもう知っている上に事件のような切羽詰まって新一が必要でなければならない理由などないのも知っている。だからこそのその甘えの見える考えが今回の別れの切り出しの理由の一つになったのだが、それはあくまでもまだ理由の一つでしかなかった・・・









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