死んで尚の恋が終わる時

・・・それでしばらくの時間を新一のマンションで過ごした蘭だが、時間が遅くなったことや翌日の大学の講義の時間があることから連絡先の交換をした上で帰ることにした。



「・・・本当に久し振りだったし、新一に会えて嬉しかったわ・・・変わってなかったわね、新一・・・」
夜の道を歩く中、蘭は嬉しそうに声を漏らしていくのだが・・・次第にその声と顔は微妙そうに歪んでいく。
「・・・でも・・・新一はあれで大丈夫なのかしら・・・小説を書いてる理由は探偵になるためだったり金銭面で自立するためだったって言ってたけど、前みたいに事件に会わない事を何でだって言ってたのは・・・」
蘭がそうなるのは新一が口にした事件に会わない事を何故と漏らしたことにあった。






・・・同じようなことを繰り返すが、蘭には事件が起きてほしいと思うような気持ちはない。それは事件による犠牲者が出てほしくないという考えもない訳でもないが、やはり厄介事は起きない方がいいと思ってである。

しかし話が進んでいく内に新一がどういった生活をしていったのかを聞いていったのだが、まだまた探偵になりたいといったように切り出したのはいいとは言える。それで小説家として小説を書いて探偵になるための資金を貯める事も・・・しかし話を聞いていけばいくほど蘭は感じてしまっていたのである。新一は事件が起きて被害者が出てる事など考えず、そこでの謎やトリックを推理したいという気持ちが強すぎはしないかと。

以前の蘭ならそんなことは考えはしなかっただろう。新一との距離が近かった上に日常的に事件に出会いやすかったことから、新一が事件を解決しなければ誰が解決するのかと惚れた弱味もあって考えていただろうから。だが新一と長い間離れていた上に事件のない生活が当然となってしまったこともだが、何より新一自身がなんで事件が前みたいに発生しないのかというような事を心底からおかしいというように言っていた姿にそう考えてしまったのだ。

しかしそんな姿に一応平和なことはいいことじゃないだったり人が死んでもいいのかみたいに蘭は口にしていったのだが、新一は分かってはいると言いつつも今もどこかで犯罪が起きているのにそれを見過ごせないだろと返してきた事に、違うそうじゃない・・・と、たまらず蘭は思った。確かに犯罪自体が無くなっている訳ではないのはニュースから知ってはいるが、だからこそ自分の周りでそれらが起こってほしいし自分がそれらを解決したいと思っているかのような事を聞きたかった訳ではないと。

しかしそれをハッキリとは言葉に出来なかった蘭はその後も話をしていくのだが、その後も何とも言い難い気持ちを話の中で抱いていったのである。特にそういった気持ちが強くなったのは蘭と会いたいという気持ちを聞いたと共に、蘭なら自分の気持ちを理解してくれるというように言ってきたことだ。

・・・確かに蘭は新一と会えたことは嬉しかったと掛け値抜きに言えるし、また一緒になることに関しては前世を振り切りきれてないのもあって望んですらいた。しかしその新一の言い方はまるでとかもしかしてなんて言葉みたいな不確かな物ではなく、蘭は自分の気持ちや考えを理解しているし同じように事件を解決する事に付き合うという確信を持っていると感じさせられたことに・・・こちらでの事件のない生活に慣れすぎていたこと及び、新一の自身すら巻き込んでくるその事件に対する渇望にたまらないズレを感じたのだ。自分と新一の考えや気持ちのズレを。

だからと言うのもあって蘭は会えて嬉しいという気持ちはあってもそんなズレを感じたのもあって、久し振りに会えた新一の所に泊まるという選択も出来たのにそれを選ばずに連絡先を交換して帰るという選択をしたのである。今のままで新一と一緒にいてもいいのかと思ったが為に・・・









.
8/17ページ
スキ