死んで尚の恋が終わる時

・・・そんな風に蘭が苦心を隠しつついる中で時間は進んでいき、四月になって蘭と光太郎は東京に行って各々の生活を始めることになった。それで蘭は前世に住んでいた経験からむしろ懐かしさすら感じるような形で東京での一人暮らしにはすぐに慣れていったのだが、光太郎の方はしばらくの時間をホームシックというような形で過ごしていたことを後から電話で本人から聞いた。誰も知り合いがいない街に寂しさを覚え、京都という場所に料理の味付けだったりを思い出して自分が改めて京都が好きだと認識したことによりと。

しかしそれは光太郎が高校の部活の時に顔を合わせた福富に新開という二人によって、自分だけがこうしてここにいるんじゃないと知った上で共に大学の自転車競技のサークルに入ったことから吹っ切れたからもう大丈夫だと告げた。



「・・・光太郎・・・こっちでの仲間が出来たんだね・・・良かったわ・・・」
・・・そうして光太郎からの電話を終えた蘭は、腰掛けていたベッドの上で穏やかそうな微笑みを浮かべていた。






・・・蘭にとって光太郎という存在は前世では一人っ子だったのもあるが、その性格だったり高校での様々な困難な状況を乗り越えてきたことから好ましい人物だと見ていた。ただ高校からの環境は聞いているだけでも大丈夫なのかと不安になったものだった。

特にそんな気持ちになったのは一年の時に部活でインターハイに出る以前にOBのやったことにより、出場資格自体が剥奪されたことによりうちひしがれて涙を流したと聞いた時は蘭も心配した物だった・・・ただその時に人が殺された訳じゃないんたからというように光太郎の事を励まそうと冗談めかせて言い出しそうになりかけたが、そこに関しては踏みとどまった。これは新一が相手ではないのだからというのもあるが、今生で自分が事件に関わることが無いことをその時に思い返したからだ。

それだけ事件が日常化していた前世についてを忘れていたというのをその時になって改めて自覚した蘭だったが、その考えについては置いておいてそんな光太郎に関してをただ元気を出すようにとしか蘭はその時は言えなかった。だがそれでも光太郎が時間が経つにつれて元気というか前向きになっていく姿に、蘭もホッとしていくと共にこれが普通の・・・というには難しい出来事があったが、それでも事件の関わらない人の姿なのだと思うようになったのだ。

ただ二年の時はまだしも三年の時に入部してきた一年に大分振り回されたといった話を聞いたが、それでそんな一年に対してエピソードを聞いた上で純粋と評して笑顔を浮かべた時には流石に蘭も唖然としたものだった。その一年にやられたことはどう控え目に見た所で年上に対してやることではないと言うのに、それら全てを許容した上で光太郎の成長した懐の深さに。

だがそれでも光太郎が人間として成長していった姿に次第に良かったと思うようになったし、大学でホームシックになりつつも仲間が出来たと聞いて良かったと素直に思えたのだ。光太郎のことが弟として好きだからこそこれからの人生で順風満帆と行くかどうかは分からないが、今のこのうまく行き出している状態を喜べるくらいに。









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