死んで尚の恋が終わる時

「・・・でも光太郎に私が自由に出来るのは、大学を出るまで・・・光太郎は大学までって分かってるって言ってたから、私はどうにか大学を出るまでに振りきらないと・・・前世の事についてを・・・」
ただそこで蘭は表情を辛そうに変え、振り切るという言葉を口にする。本当はそんなことをしたくないというよう。






・・・蘭が大学に行きたいと通した理由。それに関しては勉学に打ち込む為というのは、正直なところとしてオマケみたいな物だった。本当の目的は何かと言えば前世の思いや記憶についてを、名前は違うとはいえかつて住んでいた東京という場所で振り切りたいという気持ちがあったからだ。

京都という土地が嫌だったわけでもないし、光太郎を始めとして石垣家が嫌だったわけでもないし、友人が出来なかった訳でもない・・・そういった環境が気に入らなかったのではなく、ただこの世界に自分一人でいることに気持ちに踏ん切りをつけきれていないというのを蘭自身感じていたのだ。

そしてそういったように前世に関しての区切りがつけられてない理由は何なのかと言えば、一番は前世との比較をしたからこそ未練のようなものがあるからだ。特に夫となった新一にその関係で仲良くなった者達とその近辺で起きてきた事件の数々に関してだ。

といっても蘭は事件が起きてほしいから未練に近い気持ちを抱いているのではなく、新一やその周辺の交遊関係が事件が関わったことも加わってあまりにも濃ゆかった事から、新一やその友人達とまた交流したいという気持ちを捨てきれていないのである。その他の者達と違い、強い繋がりがあったからと思っている為に。

しかし前世と違った場所で産まれ育った上で大阪という比較的近い位置にいた友人達に関してもやっていた部活などを調べても、似た名前や姿など影も形もなかった。そして十八年程生きてきた中で自分の周りに自分と同じように生まれ変わったような存在が見受けられなかった事から、自分以外に同じような存在などいない可能性の方が高いということは蘭にも十分に分かっていた・・・気持ちはともかくとしても、現実的には新一を始めとした知り合いにはもう会えないだろうと。

だがそれで気持ちをスッパリ断ち切れるかと言えるほど、蘭は物分かりと言うよりは頭で割り切れるようなタイプではない。だがそれでもそうなのだと割り切らないとこれからの事を考えれば、前世にこだわるあまりにこれからの人生で苦悩しかねない・・・そう思った上でどうするか解決策を考えた結果として、違うところではあると承知はしてもかつて暮らしていた東都である東京にて四年の大学生としての生活を送り、考えをまとめて未練やらの気持ちを断ち切る事にしようと考えたのだ。

この考えの為に東京の大学に行くことを強行した事は流石に悪いと思った上でこんな本音は言えないと蘭も思いはしたが、こうでもしなければこちらでの父親の言葉通りになって京都から出ることは旅行でもない限りはないと見たからそうすることを強行したのである。その四年という時間をちゃんと考える時間にあてて、それ以降はもう引きずられないで生きていこうと。

ただそういったように考えはしたものの、そんな割り切るというように考えたいといった最大の理由は前世で夫婦となった新一の事を振り切らないといけないと考えたからだ・・・前世で色々山あり谷ありであって順風満帆な夫婦生活を送ってきた訳ではないが、それでも蘭からしたなら死ぬまで一途に愛を貫いてきた相手なのである。

しかし新一に会える可能性などほぼほぼ有り得ないと見た上で、その気持ちに決着をつけるのは将来的に何らかの理由から男性と付き合い結婚をする事を視野に入れるなら、絶対にやった方がいいと見たが故だ。こちらでの家族を安心させる為であったり、ちゃんとこれからを生きるためにもといった考えもあってである。

だが元々そういった理屈ではなく感情での判断を優先する蘭からしたらかなりキツいということを自分でもよく分かっていることから、余計に悩ましくなっているのである。これからの生活でそれらをちゃんとまとめる事が難しいと見て・・・









.
4/17ページ
スキ