死んで尚の恋が終わる時

・・・これはもしもの話であり、本来の流れとは違う話であると共に前世では愛し合った者達の話であって・・・

「新一・・・もう別れましょう・・・そしてもう、これからはずっと離れて会わないように生きていきましょう・・・」

・・・今生ではその愛を終わらせる話である・・・


















「・・・ここが俺の住む部屋になるんか~・・・親父は東京は物騒な所やから一緒に住めゆうとったけど、蘭の大学とは離れとるから中間値点で暮らすと蘭の方がキツくなるゆうことやから部屋は別々に借りた方がええってなったけど・・・俺は蘭の大学の方に近くても良かったんやけどな。俺にはロードがあるから大学には早く出発すればえぇだけやし」
「もう、それは前に話したでしょ?私と光太郎の行く大学は距離がかなり離れてて遠いんだし、大学で新しい生活を始めるにあたって自分達でやれることはやろうってさ。それに実家で自分の部屋があったのと違って、一緒に暮らしたら私もそうだし光太郎もそこで出来た友達とか誘いにくくなるから別に暮らした方がいいって話したじゃない」
「それは分かっとるんやけど、いざそうなると思うと心配になるもんや。やっぱりいつもはなんだかんだ言うても蘭は女の子やからな」
「もう、光太郎ったら」
・・・とあるアパートの一室の中にて、とある姉弟が楽し気に話していた。共に東京という場所に大学に通うために双子の弟である光太郎がいいと思った部屋の中、姉弟としての何気ない話で。






・・・石垣蘭は前世の記憶を持った存在である。この世界では小野田小五郎となった存在の娘であって、真波新一となった存在の奥さんであった。

蘭はかつて前世にて老齢となった新一を看取った数年後に同じように動けなくなっていき、自身も子どもに看取られる形で生涯を全うして逝った・・・のだが、気付いてみれば蘭は赤ちゃんとなる形で新たな生を受けていたのだ。石垣という家にて双子の姉弟の姉として生まれ、名前も蘭と前世のままの物をもらう形でだ。

そういった事に始めは蘭は戸惑うしかなかったが、時間が経つ内に訳が分からないながらも生きていくしかないと考えるようになっていった。自分を産んでくれたこちらでの両親はそんな事など知るよしもないままに自分達を産んだのだし、共に産まれた片割れである光太郎と隣り合う形で寝ている事からちゃんと生きなければならないと思うようになっていったのである。何だかんだあったが自分が勝手に死んだならこの家族達に重荷を背負わせる事になるのだからと。

ただそういったように決めはしたが、この生まれ変わった世界が色々と違うことには驚きを浮かべるしか出来なかった・・・その点で自分が産まれた石垣の家が京都という場所にあったことがまず第一にあった。前世では東都という日本の首都にあたる場所で産まれて暮らしてきたが、京都という場はたまに行く程度の場所でなんで東都から離れた場所なのかと最初は思った物だ。

しかしそれ以上に驚いたのはその東都という場所が東都という呼ばれ方をされず、東京という呼び名であると共に前世で暮らしていた地域についての地名やらが全く見当たらないばかりか、夫となった新一の功績が全く見当たらない事だった・・・この事から単なる生まれ変わりだと思っていた蘭は考えが違っていたのだと考え、慣れない手付きで本を読んだりインターネットで調べるなどしてようやくここが自分達の死んだ後の世界ではなく、よく似たパラレルワールドなのだという結論に至ったのである。









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