犯罪者だった男は探偵と自称する少年を何と見るか?

(公安の隠れ家)



志保「はぁ・・・」

安室「どうしたんだい、志保さん?」

志保「工藤君が薬を渡せ薬を渡せってうるさいのよ・・・たまたま貴方の部下が持ってきて間違って飲んだパイカルから工藤君の体が一時的に元に戻ったことを参考に、解毒薬の試作品を作ってみてそれを知った彼はなら飲むって言ってきたんだけど・・・それは確かに一時的には元の体に戻せたわ。けれどあくまでもそれは一時的であって永続的に元に戻せるわけではないのに、工藤君はそれをまた作ってよこせと言ってきたのよ。いざというときに使いたいからってね」

安室「それは・・・」

志保「言いたいことは分かるわ。今そんなことをするというか薬を渡したら確実に工藤君は薬の効果が切れるまで、元の体で行動を起こしかねないわ。組織にバレるかどうかなんて考えず、自分がやりたいことをやるためにとね」

安室「・・・すまない、まさか部下があんな中身が酒だと分からないような物を持ってきてしまったことでこんなことになって・・・」

志保「それは仕方無いというか、あれが無かったら解毒薬の手掛かりに関しては元の薬のデータがあっても解毒薬を作るにはほぼ手詰まりになっていたのが目に見えていたから、怪我の巧妙だと思っておくべきだけれど・・・問題なのは工藤君が試作で効果は十全ではないにしてもそれを望んでやまないことであって、それがしつこくてたまらないことよ」

安室「・・・一応僕の方でも機を伺った上で薬のデータを得られるように動くとは言っているんだが・・・」

志保「やはり自分の小さい体について色々とまどろっこしいとしか思っていないんでしょうね。そしてだからこそ彼は少しでも元の体に戻った上で、その体で組織を壊滅させる為に動きたいと思っている・・・そこに慎重にいくという考えがないというか、自分ならどうとでもなると考えているんでしょう。それこそジンに殴られてあの薬を飲まされたことは運が悪かっただとか、たまたまだったからそうじゃないなら自分ならどうにでも出来ると思ってね」

安室「そんな甘い相手なら公安もそうだが、他の海外の機関も奴らを追うことに苦労してないというか今頃とっくに壊滅させられててもおかしくない筈なのに、それを分かってないのか・・・」

志保「工藤君のお兄さんから言われたことも効いているからだと思うわ。一応お兄さんの話で自分一人で組織を追うことを止めること及び、お父さんのツテを頼ると決めたのは貴方も聞いたでしょうけど、そうすると決めた決め手はどれくらい時間がかかるのかを全く考えてもいなかったことを突き付けられたからで・・・それで彼からしたら早く元に戻るためにも貴方達という協力者の力を借りるという苦渋の決断をしたつもりなのだろうけれど、同時にお兄さんから言われた元の場所に何事も無かったというように戻れる時間についてがネックになっているんだと思うわ。早くしなければ一番身近に迫る問題として留年というタイムリミットがあるから、その前にはどうにかしたいとでも思ってね」

安室「・・・学業が重要ではないとは言わないが、そんな個人的な事のために彼は急ぎたいというのか・・・」

志保「というよりはそれを言われたから時間についてをようやく考えたといっただけであって、言われてなかったら時間についてなんか考えずに自分だけで動くと活動していたでしょうね。そして組織を追い詰めたとしてもそれでどれだけ時間がかかってたかは予想は出来ないけど、元に戻れた時に彼の性格ならしまったとでも言いながらまぁ元に戻れたし奴らを捕まえられたからいいかみたいに楽観的に言いそうだとは思うけれど・・・そう考えてみればどっちに転んだとしてもどっちもどっちと言った所だったでしょうね。時間を気にしたから今の形になって、時間を気にしなかったら貴方達と協力関係になってなかったばかりか、下手をしたら彼の行動で貴方達公安が何か不都合だったりが生じていたかもしれないわよ」

安室「・・・そう考えればどっちが良かったとは言いきれなかったのか・・・彼のお兄さんが彼にそれらを教えるべきだったのか否かに関しては・・・」

志保「その辺りに関しては彼のお兄さんは悪くないと思うわ。これは工藤君というか自分のやろうとしていることを理屈としてはどうするのがいいのかの優先度を、工藤君がどう気持ちで思っているのかの私情で決めているのが間違いなく原因よ」

安室「・・・手厳しい言い方だが、確かに君の言っている事が正しいだろうねこれは・・・」









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