いつかを変えることの代償 終幕(前編)

・・・新一は事件に遭遇したものの、自分に近い者の命は失われることに犯人になるようなことはなかった。それも犯人に襲われたり、事故のような形で死にそうになったことがあっても助かる形でだ。数えるのがめんどくさい程の数の事件に関わってきたのに、身内に関してはそういった悲劇は起こることはなかった。

運が良かったと、そう言ってしまえばそれまで・・・と言えるような物ではない。ここまで来てしまえば最早そこまでの事は、新一と仲のいい人間には起こらないと確約されているような物になっていると言っていいレベルの代物だ。

現に金田一は事件に関わった後輩が死ぬという事態に陥り、幼馴染みが復讐の殺人に手を染めるという悲劇が起きた。後輩の死に関しては一人では乗り越えられたかも怪しい程に金田一は落ち込んだ・・・のだが、実際に事件に巻き込まれたからにはこれくらいの事があっても普通はおかしくはないのだ。






「・・・そう考えれば工藤君は理不尽な程に恵まれているのよね。事件に関するあらゆる運において・・・」
「・・・どうした宮野、急に・・・?」
「・・・ちょっと前のことを思い出したの。今はお姉ちゃんは無事だけれど、前はお姉ちゃんは死んだのよ・・・工藤君の目の前でね・・・」
「・・・あ~・・・そういやそうだったな・・・」
そこで志保が複雑そうに呟いたことに体勢を直して何事かと小五郎が問い掛けるが、志保の姉・・・明美についての事が出てきた為、小五郎も思い出して表情を歪ませる。以前の事件で明美がいかに死んだか、コナンの時の新一から聞いていた為に。
「・・・工藤君が悪い訳じゃないことは確かよ。でもそう聞くとどうにも不平等に感じてしまうし、嫌な考えも浮かんでしまうの・・・どうして工藤君だけそうなのかってね・・・」
「・・・もうそういうものだって考えるしかねぇんだろ・・・じゃなきゃ不毛なだけだしな・・・」
だからこそ志保が不平等な運の巡り合わせに複雑さを滲ませながら言葉を漏らす様子に小五郎も生半可な慰めなど出来ず、割り切るようにといったように言うしか出来ない。それこそ新一自体には悪意など一片もない為に。
「・・・まぁ新一君と金田一君についてはこの辺りにしましょうよ。あんまり長く話しててもしょうがないでしょうし」
「・・・そうだな、そうするか」
そんな空気を変えるように園子が明るく声をかけたことに、小五郎も同意して志保も頷く。こういった時の園子のムードメーカーとしての気質は変わってはいないようである。
「つっても・・・まだ何か俺に話はあんのか?一応明智についちゃ話はしたぞ?」
「う~ん・・・一応聞くことは聞いたからこっちはいいけれど、おじ様から何か私達に聞きたいことはないの?こっちが聞くだけ聞くってのも不平等でしょうし・・・」
「オメーらに、か・・・あ~、どうすっかな~・・・」
それで話はまだあるのかを問う小五郎に園子はそっちはないのかと聞くと、少し言葉にしづらそうに頭をかく。
「どうしたの?そんなに聞きにくい事を聞きたいって考えてるの?」
「まぁ、そんなもんだが・・・しゃあねぇ、ここまで来たから聞くけどよ・・・ぶっちゃけ新一も込みで蘭との付き合いを止めたみたいにオメーらは言ったが、蘭についちゃどう思ってんだ?いくら蘭が新一と一緒にいたりその関係があるからって言ったって、ずっと四六時中ベッタリ全く離れねぇ訳じゃねぇんだから新一がいない時に交流ってのも出来ねぇ訳じゃねぇだろ?」
「あ~、そういうことね~・・・」
園子がその様子から言いづらいことかと聞くと、小五郎も決心したとばかりに蘭への気持ちについてどうなのかと問い返し、園子だけでなく志保も確かに言いにくいといったように頬をひきつらせる。一応元親の立場として、娘に何か不備があるのか気になるという気持ちが小五郎から確かに伺えた為に。









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