犯罪者だった男は探偵と自称する少年を何と見るか?

・・・確かに新一と違い金田一は普段から推理の時に出る能力を遺憾無く発揮するようなことはしていなかった。しかしその類いまれな能力が発揮される時はいつも事件を前にして人としての正義感を燃やした時であって、その際の推理力の高さは遥一をもって平行線と評せるくらいなのである。

しかしそれならば新一もそうではと思うかもしれないが、決定的な意味で違う点がある・・・それは金田一には新一と違い推理が出来て、謎を解けたという喜びを感じる気持ちが見えないところだ。むしろ事件を解決しても喜ぶどころか悲しみややるせなさに表情を崩したままといったことの方が多かった。

そして更に言うなら金田一にとって事件に出会す事は喜びという訳ではないし、事件を解決することは自分がその謎を解けるからという義務感からではなく残酷な事を仕出かした者に対する怒り・・・本人が聞いたならそこまでじゃないというように否定するだろうが、義憤からによるものだ。そしてそこで事件を解決したとしても新一のように喜ぶこともだが、自分がそうしたんだと喧伝することもなかった。

むしろ事件を解決しても新一のようにアフターを気にしないのではなく、解決した事件の犯人とも牢に行って面会という形ではあるが交流したことも多々あった・・・金田一耕助という名探偵の孫の血を引き継いだ探偵としてではなく、金田一一という一人の人間としてだ。そしてその後に多少は犯人も救われる事もあった。

そんな金田一だからこそ似ているようでいて違い、隣り合っているようでいて越えられない線を隔てて近くにいる平行線の存在だと遥一は評したのだが・・・新一はそんな金田一とは全く違う在り方を現していったからこそ、平行線とは評さない上に距離を起きたいと思うようになったのである。

それが如実に現れているのが今回の体が小さくなった件で遥一に言われるまで何も具体的に考えていなかったか、自分はこの体で前のようにやっていくとでも考えていたであろうことだ・・・ハッキリ言ってしまえば私情極まりないというか、新一の言うような理想の探偵として有り得ない物だと遥一は見ていた。

特に一人で行動しようとしていたこともそうだが、どれだけ時間がかかるかを考えてすらいなかったことだ・・・これは自分を襲った男達への怒りがあったからというか怒りがあったとしても、それを飲み込んだ上で冷静に物事を判断を下すべきだったと遥一は見た。しかし新一はあのまま話が進めばまず間違いなく工藤家に残った上で遥一を巻き込んで協力させてきたばかりか、それこそ自分で解決することにこだわるあまりに時間がかかったなら・・・手遅れになればなるほど優作や他の誰かの助けなんか今更借りる気になんかなれないと、意固地になってしまっただろうと。

ただそうは言うものの新一の事件もそうだが目的の物を引き寄せる引力のような物は金田一と比べても遜色ない物だと遥一も認めていて、意外と時間がかからずに目的の男達に辿り着く可能性は決して低くなかったのではと見ているが・・・それらに時間を多大に取られる形で巻き込まれるつもりはない上に、それで時間がかかれば新一が私怨混じりの行動であるのに次第に探偵として奴らを捕まえるのは自分も関わったから当然だろうと、公私混同も甚だしい考えになるのが目に見えているから余計に遥一は嫌なのであるし金田一とは違うと見ているのである。前に状況は違うが金田一は一人で旅をして誰を巻き込むことなく動くことを選択したが、新一は自分でやりたいと言いつつも周りにサポートをさせようとしている自覚というか考えなどなくだ。

そういったような金田一より普段の能力は高いはずなのに、冷静になれず私情まみれの判断を下し人を巻き込むことに気付いてすらもいない・・・そんな新一を平行線という判断を下せないのは遥一からして当然であったし、同時にそんな新一を問題ないと思っている優作達の事を見限るのもまた当然であった。









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