「まぁその事についてはせめて自分が巻き込まれないように頑張ってくださいとしか言えません。下手に貴女が新一と一緒にいることを嫌がって別の場所に行きたいと今から言っても、大方貴女という手掛かりを逃がすわけにはいかないと血眼になって追ってくるのは目に見えてますからね」
「・・・そうなれば私の立場もまずくなるということね・・・分かったわ。貴方からの話をちゃんと受け止めた上でそこでの立ち居振舞いを考えた上で動いていくようにするし、今の話は聞かせてくれたお礼もだけど貴方の考えもあるだろうから私の心の内に秘めておくわ・・・」
「そうしていただけると助かります」
そんな少女に今更の拒否が望まれない理由を遥一が語ると、諦めたと言ったように力ない声で返す答えに小さく頷いて返した。こうして理解してくれたのもあって話をしたのは間違いではないという様子で。


















・・・そうしてそれから時間は経ち、その日の夜になって工藤家の固定電話へと電話が掛かりこれからそちらに十分後に向かうが、その時間には門の所に少女だけが来るようにして遥一は顔を見せることも覗き込むようなこともせずにいてほしい・・・と優しげな声だが否応なしにそうしてもらいたいという圧のある言葉を受けた遥一はその言葉にあっさり了承を返し、電話を切った後に少女に会話の中身を伝えた上で家の外へと送り出して車が停車する音がした後に少しして、すぐに車がまた発進してその場から離れていく音を遥一は確認した。これでもう少女はここから出立していなくなったのだと。



「ふぅ・・・本当に良かったですよ、あの少女があれだけ聞き分けに理屈での理解が早かったことは。出来ることなら新一にはあの少女の割り切り方を見習うというか、爪の垢を煎じて飲んでもらいたいくらいです」
・・・そうして再び家のリビングにて一人になった遥一は紅茶を飲み、一息ついてから新一に対しての呆れの声を漏らした。一日程度の短い間ではあったが少女の理知的な態度を新一より遥かに好ましいと思うが故に、対比して見える新一の色々な粗についてに。
「素の能力なら新一の方が金田一君の上であるのは確かなのに、それらは言ってみるなら自分が楽しむ為の物であってむしろそれが楽しむ為の状況でなければ金田一君よりも冷静さを失い、まともな判断を下せなくなる・・・あんなものを見せられ続けてきた上で、両親もそれに伴いというか父親も多少はマシではあってもその性質があったからこそ新一があぁなったと考えれば、私からしたなら新一の教育は失敗したとしか思えませんよ。私にあぁも言い負かされるような惰弱な様子を思い返せば尚更に、ね・・・」
そしてそのまま一人言の中身は新一や親の優作達にも及び、比較として出された金田一という人物より下だと顔に手を当てながらも、指の隙間から覗いた冷たい瞳に情などないといったように漏らしていく。






・・・遥一がこのような事を言うのは周りの誰に言っても信じられないと思って誰にも言っていないが、前世の記憶があるからでありその前世の中で最も縁深い人物であり、平行線と評した上で宿敵といったように周りの者達から言われた存在である金田一という人物と比べ、様々に足りないと感じたからだ。自分の平行線と見るには無理だと。

ただそれは能力的な物からというより、むしろ精神面からしての物だ・・・前世の遥一はとある事情から殺人事件を起こすと決めて動いていったがそこに居合わせた金田一が事件の謎を解明したことから、以降に何度も自身が関与した事件で出会したりして対峙してきた。

そういったやり取りを何度も経てきて金田一を能力や人格も踏まえて平行線と称した遥一だが、その事件の謎に関しての推理力に関しては新一と比べても見劣りする物ではない。ただ平時の状況においては金田一は別に推理小説や謎が好きだといったような物ではなく、むしろ学校の勉強などに関しては新一と比べるまでもないくらいに落ちこぼれではあったが・・・それでも遥一が平行線と称したのは事件に際した際の推理力のすごさもそうだが、何よりも新一とは違うその人間性にあった。









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