犯罪者だった男は探偵と自称する少年を何と見るか?

「・・・ごめんなさい、答えにくい事を言ってしまって・・・」
「・・・いえ、むしろそういうことを言える貴女にならばこそ今の言葉にお答えしましょう。貴女が新一の元に行くということもありますが、何より貴女の感性は私寄りのようですから色々と言っておいた方がいいと思いましたからね」
「え・・・?」
その表情が初めて変わった様子を見た少女も謝罪の言葉を口にするが、遥一が首を振りつつ意味深な事を口にした事に戸惑いを浮かべる。
「・・・まず前提として言わせていただきますが、私は新一のように探偵を名乗るつもりもなければそうなりたいという気持ちを持ったこともありません。私がなりたいと思っているのは奇術師・・・いわゆるマジシャンであって、高校を卒業したらその道に進むつもりでいます」
「マジシャン?」
「えぇ、このように」
「っ、綺麗な薔薇ね・・・」
そうして自分がマジシャンになりたいことを口にして首を傾げる少女の前に手を差し出し、手首をぐるりと一回回すとその手の中に深紅の薔薇があったことに少し驚いた様子を少女は浮かべた。
「えぇ。とまぁこのように簡単なマジックならいつでも見せられるようにといくつもネタを仕込んでいますが、これはあくまで私がマジシャンになると決めた上でいついかなる時に奇術を求められる事になるか分からないから、常日頃からそういった心構えをしておこうと備えている事です。これは私の尊敬するマジシャンから学んだことであり、私もまたそうありたいと思って高校を卒業したらそういったマジシャンになると決めていますが・・・新一は貴女も知っている通り高校生探偵と呼ばれ、本人も将来探偵になることを周りに公言しています。ですがそうして探偵になるという気持ちを抱いているのはまだいいんですが・・・父さんも含めて新一は事件をやたらと引き寄せる性質を持っていることに加えて、付き合いの長い者はそれに付き合うというか一緒に解決するのは当然だろうといった態度を求めてきます。私にそんな気はないといった気持ちなどお構いなしにです」
「・・・そういった気持ちについて、貴方は言わなかったの?」
「何度も言いましたよ。ですが事件が起こってしまえばそれを解決する事の方が大事であり、お前も慣れてるから何かあったらマジシャン目線から協力してくれで流されて済まされるのがオチでしたからね。ですからこそ私は新一達の説得については諦めた上で、必須の用事でもないなら出来る限りは新一達と行動を共にしないようにと決めたんです。そしてその過程の中で貴女の言うような一線を画するような考え方を身に付けていったんです・・・感情や正義感で動くことが悪いとは言いませんが、それで理屈を置いていきやすく冷静さを欠かしてしまいがちな新一達に対し、冷静でいて理屈としてはこう考えるべきではないかといったような考えにね」
「・・・家族の在り方から貴方はそうなったということなのね」
「全てが全て新一達のせいでという訳ではありませんが、大部分を占めているのは確かです」
それで薔薇を懐にしまい自分がいかな考えを持つに至ったのかに新一達との違いがあるのか・・・それらを自身でまとめて言葉にしていった遥一に、少女は納得した様子を浮かべるがまだ遥一は口を動かしていく。









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