いつかを変えることの代償 終幕(前編)

「そういった点を踏まえれば金田一君が工藤君と違うといった考えは正しいと思うわ。話を聞く限りでは工藤君が江戸川コナンだった頃の事を抜いたとして考えても、事件に対する姿勢は因縁だったり明らかに何か起こることが前提になりそうな所に行く以外は基本的に事件に巻き込まれて、やむ無く事件を解決するって形で目立とうだとかって気持ちが無く、事件がない時は至って普通の人って所はね」
「まぁそう考えりゃな・・・園子も同じような考えか?」
「ん~、私が考えたのは少し違うわ。新一君とその金田一君に関して感じたのは、新一君の運が悪い意味で良かったって事ね」
「・・・悪い意味で、いい?」
志保がそれで自分が感じたことをまとめたことに小五郎が納得した後に園子にも問いを向けると、相反するような答えが返ってきた事に首を傾げる。
「・・・話に聞くと新一君と違って金田一君って自分に近い知り合いが殺されたり、犯人になったりしてたんでしょ?それもかなり後味の悪い動機だったりも加わって・・・でも新一君の場合近い人は危機に陥ったりはしても死ぬことは無くて、犯人になるようなことも無かったでしょ?こういう言い方はあまり良くないって分かった上で言うけれど・・・そういった意味で運が良かったって言ったのよ。近い知り合いがそうなっていないって意味でね」
「・・・あ~・・・それは確かにっていうか、俺ら三人全員それを体感してんだよな・・・実際死ななかったことが本当に不思議って事を体験する形でな・・・」
園子はその違いを金田一についてを言いにくそうにしながら口にすると、小五郎も実感があるために頭をかきながら同意する。






・・・度々会う明智から金田一が遭遇してきた事件についての話についてを聞いてきた小五郎だが、結構な割合で後味の悪い事件が多かったと感じていた。その中で先程園子達にも触りくらいは話をしたが、後味の悪い事件として小五郎の印象に特に残っているのは金田一の後輩が事件の真相に迫った為に犯人に殺された事件と、金田一の幼馴染みと言える人物が連続殺人の犯人となった事件である。

この二つの事件が特に印象に残っているのは明智と話した際、園子と同じような事を言っていたからである。新一は身近な人間が犯人になった経験も殺された経験もないということを。

・・・実際に新一が蘭とは言わずとも園子辺りが事件により死ぬ、もしくは事件の真犯人となるようなことがあったならどうなっていたか・・・どうなるか予想はつかないというのが正直な所である。金田一はその事柄を乗り越えはしたが、新一はそんな精神にクる状況の事件など巡り会うことなどなかった為に。その点では園子の言うように新一は運が良かったと言えるのだが・・・






「えぇ。でもそれはあくまで悪い意味で運が良かっただけ・・・私の場合はミーハーだったことだったり色々迂闊な事が多かったりしたことがあったからだけれど、少し運が悪ければ私達が死んでいたなんて展開なんか何個もあった。けれどそれが自分の近くで命が失われてないって考えが、探偵としての自信をつけた・・・あまりいい方じゃない方にね」
「だな・・・実際あいつの行動の結果って今思い返してみりゃ推理の結果は実力だからともかくとしても、殺されるか死にそうになっていたのをどうにかすることが出来たのは運だったなんて場面も結構あるからな・・・けどあいつはそう考えるような事はなかったってことか。運も実力の内なんて言うが、新一は運が良すぎて運に頼りすぎてたんだな・・・それも自覚なんてない形で・・・」
その上で運の良さが悪い意味で新一の自信をつけたと口にする園子に、小五郎は顔を手で覆い天を仰ぐように頭を上に向ける。









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