犯罪者だった男は探偵と自称する少年を何と見るか?

「・・・ふぅ。ようやく終わりましたね」
・・・新一達三人が工藤家を出たのを確認し、それから紅茶を入れたカップを口に傾け離した遥一は一仕事終えたというように目をそっと閉じながら漏らす。
「やはり事前に父さんに話を通しておかなくて正解でしたね。あの人なら私に併せて演技を出来るだろうとは思いましたが、同時に私の考えとは真逆な事を母さんの言葉からどうにかしたいとでも思って発案しかねませんでしたからね・・・」
それでそのままの体勢で先に打ち合わせをしなかった理由について間違いではなかったというように漏らしていく。






・・・遥一が何故優作に自分の考えを先に明かすようにしなかったのかは独白にあったよう、自分に合わせるのではなくむしろ有希子や新一の方に合わせに行くのではないかという可能性を感じたからだ。

一応というか年の功もあって優作が自分以外の工藤家の中では頭の回りも早く冷静な人物であることは承知しているが、同時に身内には色々と甘いというかこうしたいというワガママに答えるような隙を見せやすいことも承知している・・・故にこそ先に優作に話をしたなら有希子にも話が通る事は想像出来たが、そこで有希子が新一の気持ちを考えれば自由に出来ないのは可哀想といったことを言い出し、新一もそういったように言うだろうからどうすれば折衷案だったり最善のアイディアになるのか・・・というように考えて遥一が予測出来ないのはまだしも、新一をこれからも元の体に戻るまで傍らでサポートしてくれと言われるような展開になることも有り得ると見たのだ。

そんなことになるなど遥一からしたなら望むべく事ではなかった・・・だからこそ敢えて事前に優作と話し合うような時間を設けることも、打ち合わせをすることもなく話を進めたのだ。新一も勿論だが有希子にも下手に話を先に通されて優作に情から判断を曇らされることを避けるため、そして下手に時間を空けて打開策を考える時間を設けて別のやり方があるのではないかと模索する心理的な余裕など与えず、この場での決定により後にやっぱりやり方を変えようなどと言わせず決定させる為に・・・






「・・・ですがやはり何より、あの新一をこの家でなくともこの近くに置くこと自体が面倒になりかねませんからね。あのままの新一がこれまでのように行かないならと手段を選ばないのもそうですが、私をその為に巻き込みかねないのが何よりの懸念事項でした・・・私からすればそんなことなど絶対にゴメンですからね・・・」
それでそのままに新一がこの家の近くにいたならと仮定した時の面倒さを思い、カップをテーブルに置きつつ首を横に振る。






・・・そもそもそこまでして徹底的に優作に新一をこの近くで活動するようなアイディアを出させまいとしたのは、ひとえに新一が自分が思い通りに活動するために主に事情を知る自分を否応なしに巻き込みにきて、後々も含めて多大な時間を取らされかねないことを危惧しての物だった。

これは新一がやたらと謎の多い事件に巻き込まれやすい上でその持ち前の推理力に好奇心からその謎を解決したいという欲求があるからこそだが、それは小さくなるまでの体だからこそ出来たことで小学生低学年程度の体で誰がそれまでのように事件に関わることを良しとするかと言う話になるが・・・新一がそんな体のこと程度で諦めるような殊勝なガラではないことは遥一自身よく分かっていた。むしろ障害が多ければ多いほど、それを乗り越えようと様々に手段を講じようとするだろうと。

そしてその手段の中で最も手軽でいて身近な物が何かと言えば、身内であり事情を知っている遥一を表の推理探偵役に仕立てあげることであり、そしてそのままなし崩し的に小さくした男達を追う役割を優作達も含む形で負わされるというものだった。









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