犯罪者だった男は探偵と自称する少年を何と見るか?

「無論、新一も流石にその男達や関係者を捕まえたいとなった時に自分の力のみでそうすることは難しいとは思うでしょうが・・・自分一人でと言っておきながら困ったことがあれば人頼みというのは筋が通りませんし、その時だけに協力してほしい人達に事情を明かさず協力してもらい、自分の望み通りになったら口を閉ざし協力ありがとうとだけ言う・・・なんてことが許される筈ないでしょう。よしんばうまくその協力者に何も言わないまま誤魔化して協力してもらったとしても、何もその協力者が知らないからこそ取り返しのつかないことになることもないとは言えません。一例を挙げるなら協力してもらった者が死んでしまう事態になる、であるとかです」
「なっ・・・!?」
「これに関しては否定出来ないでしょう?実際に貴方もその男達の取引現場を見たという理由で頭を殴られたのですから、その男達の事を何も知らせずに捕縛だけにするようにと言って協力させようとしたら返り討ちにあって殺される・・・なんてことを有り得ないと楽観視してその人達が死ぬということは有り得ないとは言えませんよ。まぁ要するにこの流れで私が何を言いたいのかと言えば、次に言うことも関係する形で一人でやろうとすることは早々に見切りをつけるべきだということです」
「なっ・・・ま、まだ言いたいことがあるってのかよ・・・!?」
「えぇ。むしろそれが最も重要と言っても過言ではないことです」
その上で遥一が補足はしつつも一人でやることの仮定での非を強烈に口にしていく中、まだ続きがある事に新一は愕然とするが平然と重要なことだと返す。
「・・・一体何だ、その最も重要な事とは?」
「単純な話としてどれだけ時間がかかるのかを考えているのか、ということですよ。もしその男達を捕らえることもですが、薬の現物なりデータなりから元に戻るきっかけを得られてそれが形になるのか・・・それらに関して手をこまねくのもそうですが、あくまでも一人でやることにこだわり時間がかかればかかる程、元の生活に戻ることが難しくなるのが目に見えてます。現に高校は一般的に三分の一以上の欠席で留年が決定するとのことですが、一人でやると押し通して色々と手間取り欠席日数を越えてしまったらその時点でもう新一は留年確定で、元の生活には戻れなくなる・・・というわけです」
「っ!?」
「・・・成程。留年という問題一つ取っても新一が元に戻るのに手間取るような事になれば面倒だから、一人でという意地を張ることは止めて効率を優先させた方がいいと遥一は言っているのか・・・」
「そうなります」
優作も先が気になるというように先を促すが、そこで薬指を立てて遥一が口にしていった時間と留年という例に新一がハッキリと驚愕の表情を浮かべ、確かに否定出来ないと重く納得する優作の様子に指を立てていた手を下ろす。
「今は新一が元に戻って留年確定を免れると共に元に戻れることを前提に話をしましたが、想像はしたくはないにしても残酷な形・・・それこそ留年もそうですが、その男達を捕まえる事に時間がかかって手間取るだけならまだしも、薬かそのデータを手に入れても新一が元の体に戻れない可能性も一応は考えるべきかと思います」
「そんなっ・・・そんなこと認められる訳ねぇだろ!元に戻れないなんて!」
「落ち着いてください、新一。そうはならないとは言ってません・・・ですが貴方一人でやろうという意地で時間をかけるようなことになれば、留年を始めとした時間という待ってはくれない様々な問題が例え元の体に戻れるようになったとしても、それらは貴方に降りかかりますよ?」
「っ・・・そう考えると意地だけで自分でどうこうするなんて言えねぇっていうか、言わない方がいいってことかよ・・・」
そうして淡々と駄目な事になり得る可能性も挙げるとすぐに新一は激昂するのだが、絶対ではないと言いつつも時間に関してはどうしようもないことを告げると、否定出来ず悔しげな様子を浮かべた。時間という誰にも止めようがない存在を前にして、意地を優先させる判断は流石に遥一の話から出来る筈がないと。












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