親の背に子が倣うか?

「にしても、今となっても信じられないよな。骸が雲雀さんの下で働くことを選択するなんて」
「その言葉をそっくりそのままお返ししますよ。前世じゃ一応は君は雲雀恭弥の上司という立場だったじゃありませんか」
「その辺りは元々は俺が望んだことじゃない流れがあったからだよ。だから俺としちゃ雲雀さんの考えを理解したのもあるから今回は部下って形になるのは納得したけど、お前は完全に犬猿の仲だっただろ?」
「・・・前の僕なら確かに雲雀恭弥の下に付くなんて絶対嫌だと言っていたのは確かでしょうが、何故か僕達と違って前世の記憶がない上で行動原理が以前とあまりにも違っていましたからね。この辺りはあの両親の影響からなんでしょうが、だからこそあの両親に対する気持ちや行動に関しては間違ってないと思えたのもありますし、他にやりたいことも無いからこうして風紀財団に所属してもいいと思えたんですよ。というかそもそも雲雀恭弥が記憶を持っていたなら僕が配下につくことなんて断固拒否していたでしょうし」
「あぁ、確かにそうだっただろうな・・・」
そんな中で二人の会話は更に進んでいき、前世といった意味深な言葉が並ぶ中で綱吉と呼ばれた男は骸と呼ばれた男の言葉に苦笑を浮かべる。






・・・前世という言葉が出てきたが、綱吉と骸もだがこの風紀財団に所属する面々の結構な割合が前世を覚えている上で仲間だったり敵だったりした存在であった。だがそういった面々の中で、何故か恭弥だけが前世の記憶を取り戻すような事もないままに進んでいった。

その事に何故なのかは綱吉達にも分からなかったが、風紀委員時代から所属していた身からしたならむしろそうでなければ風紀委員としての意味を為さなかっただろうと見ていた。前世では拳どころか鉄で出来たトンファーで人を殴り倒す事など日常茶飯事だったが、あれは前世での環境だったからこそ出来たことであって、今生でもやっていたならそんなことが許されないどころか警察沙汰になっていたことは明らかであった。

そしてそんな物なのに風紀委員として活動出来るかもそうだが、新一達のアンチテーゼとしてというのは犯罪者になるという事と取られかねなかった・・・そう考えれば恭弥が前世の記憶を持っていてそのやり方を踏襲しなかったのはある意味では良かったと綱吉達は思った上で、それこそ骸を始めとして恭弥のお気に召さないから風紀財団に入れなかった人材は何人もいただろう。恭弥はこちらでも気難しい性格をしているが、前世の恭弥はそれに輪を何個もかける形で気難しかった為に。






「しかしそれなら貴方もわざわざここで働きたいというような理由など無かったのではないのですか?貴方のことだから僕も含めて前世での関係が無くなるのは嫌だったというのもあるかと思いますが、それでも獄寺隼人だったりは普通に交流してくれたと思いますよ」
「・・・そこに関してはこの風紀財団でやれることをやって不幸になる人を減らせて悪い奴らを制裁するようにしたいってのもそうだけど、親に対して思うところがあるって雲雀さんの気持ちに賛同出来たからだよ。と言っても今生での親じゃなく、前世での父親に対してね」
だが骸がそれならと問い返したここで働くことを選択した意味についての問い掛けに、綱吉は複雑そうな笑顔を浮かべながらも前世での父親が強くあると言葉にした。









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