親の背に子が倣うか?

・・・情に揺らがない判断を下すのが真の役割だという話だったが、鈴木財閥の当主夫婦となったからには園子だけに全てを任せる訳には行かずに真自身で案件に携わる必要も何度もあった。だからこそ真は恭弥の事を知った上で、風紀財団の設立に協力することに関して話を主導して進めていった。

この辺りに関しては真が将来的に必要になると考えたのもあるが、個人的な部分として正義感の強い人物だからこそその活動理念により活動してもらえれば、色々な被害や悲劇を抑えてもらえるという希望的な観測があったからだ。これは真自身は別に頭が悪いわけではないが、新一のように事件は起きれば自分が推理して解決すればそれでいいと言えるような考えや能力を持ってはおらず、それなら事件そのものが起きないように根本から解決すればいいと見たからだ。

それで真は風紀財団の設立の手伝い及びスポンサーになることを進めていったのだが、それは風紀委員時代の活動で鈴木財閥に少なくない損を防いでいたという実績が何度もあったことから、案外あっさりと賛成となった上で・・・一年が経つ頃にはその判断が正しかったと言える結果を風紀財団は出したのである。

この事に関してを推し進めた真は評価を上げることになるのだが、もしそこで例え話として出たような蘭の気持ちを汲んだ風紀財団に対する嫌がらせのような形の行動を取ればどうなるかというのは火を見るより明らかだった・・・風紀財団と鈴木財閥の関係は確実に今の良好な関係に陰りが出ることもそうであるが、そんな子ども染みた仕返しの協力の為に行動をするのであれば真と園子の評価は確実に言葉にはされずとも、著しく下がるであろう事は。

だがそんなことになったとしても、蘭は私の気持ちを聞けば当然だと思うだろうしちょっとの事にそんなに目くじらを立てる方がおかしいと言うだろう。就職活動など新一という親が金持ちであって共働きなど財政的に必要ない相手と結婚した蘭は、企業的な付き合いであったり金の流れを一時的にでも止める事がどれだけまずいことなのかを考えることもないままにだ。

しかしそれで懇切丁寧に教えれば蘭が納得するかと言えばそうではないのが目に見えているのもまた面倒な所というか、それなら別の事で恭弥をどうにかしろと丸投げになるのがオチになるのは目に見えていた。感情的になった蘭は理屈で物を考える事を放棄しやすい上、それで納得させた所で別の事をして教育という名の自身にとっての鬱憤ばらしをしたいと言い出すのは。

しかし昔の新一達と知り合ってしばらくするまでの真ならそういった蘭の様子に四苦八苦してどうにか折衷案を考えようとしていただろうが、今の真は鈴木財閥現当主としての経験に心構えが備わっている為にどちらを優先すべきかはちゃんと見極める力はついている。とは言え元来情け深い真は蘭や新一達を見捨てるとか見損なうといった事はないが、それでも蘭達からしたなら自分達の気持ちや考えを察して動いてくれない薄情者と映る事だろう・・・真はそういった事を言われるのを覚悟の上でやっているとは思わずだ。






「・・・なぁ、骸。さっきの雲雀さんのこっちでの両親が出てった様子を見てどう思った?」
「聞くまでもないことを聞かないでください。予想通り以外の何物でもありませんが、そういう貴方はどうなんですか?綱吉君」
「そりゃ俺もお前と同じ考えだし、むしろあの二人と雲雀さんが気が合うなんて事を考える方がおかしいだろ」
「それはそうですね。この風紀財団が設立された経緯を考えればあの二人と不和になることは当然と考えない方がおかしいでしょう」
・・・所変わって風紀財団の正面玄関口の脇にて。
先程怒って出ていった蘭とそれを追い掛けていった新一の姿を見届けた入口横に並ぶ二人のスーツを身に付けた男は、その様子についてを話し合っていた。恭弥の事を雲雀と呼びつつ、あぁなることは当然と予測済みであったと。









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