親の背に子が倣うか?

・・・最初こそは小五郎は恭弥にわざわざ来なくていいと言って突き放していた。お前には新一達がいるだろうし、自分の元に来る意味なんてないと。しかし恭弥の我が強くてそんな言葉程度では動じなかったのもあるが、何より新一達の考えが理解出来ない上で小五郎の方が余程好ましいというように言った時・・・小五郎は我慢をしようとはしたが、たまらず泣き崩れてしまった。そして語っていった・・・誰もが新一達を褒め称える中、自分の事を見て見もしないようになったか我慢するように言われることしかなかったということについてを。

ただ小五郎は自分が何故そこまで不満を溜め込んでいるのかの大元について言いはしなかったが、それでも恭弥はその様子からある程度は察した。新一達は小五郎に対して我慢を強いるような何かをさせたが、強いられた側である小五郎はそれを飲み込みはしたがその事を決して軽くないと見ているのに対し、新一達はそこまで重くないと思った上でまた前のようにならないかとしようとしてことごとく失敗していき・・・最早小五郎の中では新一達との仲の改善については考えられないレベルになっているのだろうと。

それでそういった風に考えた恭弥はその後も一人で小五郎に会いに行き、小五郎もまた恭弥一人ならと以前は見せていたように表情を明るくさせて出迎えた。小五郎からすれば一見は愛想はないように見えるがそれでも新一達とは違って自分を気にかけてくれる優しい孫であり、恭弥からしたなら祖父であると共に新一達のせいで苦汁を飲むしか出来なくなった被害者と言っても過言ではない存在であって・・・風紀財団を作ろうと思った一番最初のきっかけとなった人物だというように認識していた。

そんな認識違いはさておいても小五郎が恭弥の行動及び来訪で以前より遥かに救われた状態になったのは確かな上で、その二人の交流が何人かの認識を変えていったのである。そしてその代表的な存在が、今恭弥の目の前にいる三人であった。






「そもそもを言うなら貴女方も言おうと思えば父さん達に言えた訳でしょう。僕と小五郎のお祖父様との関係に関してはね」
「・・・言えるわけはないというか、言ってはならないと思ったから言わなかったのよ・・・貴方の言っていることが理解出来たからこそ、蘭達にその事を言っても余計に事態がこんがらがるだけだろうと見てね・・・」
「それに関しては真さんも私と同じ気持ちだったからこそ、何も言わないと決めたのよ・・・風紀財団の理念を聞いたからこそ業務提携をしようというのもそうだけれど、新一君達に協力を願わない理由についてを聞いたからこそね・・・」
ただ今度は逆にと恭弥が何故自分の考えを二人に言わなかったのかと聞くが、英理も園子もだが真も揃って苦い顔を浮かべるしかなかった。前にした話からとても新一達に話せるような気持ちにはならなかったと。






・・・小五郎と英理は一時期は離婚も間近ではないかというな仲であったが、それらに関しては新一のおかげ・・・というよりはもう今となっては新一のせいという形で、大分マシな形になった。もう少しすれば別居の解消及び夫婦として元に戻れるのではというくらいにだ。

しかしそんな仲だった二人は一応は離婚こそはしていないものの、別居という形を続けることになった。その理由は新一や蘭と小五郎が不仲になった事もそうだが、新一達が夫婦となった後の生活を考えれば小五郎と英理が一緒にいたならそんな二人を突き放したい小五郎の負担になると英理が考えたからだ。

実際の所として英理も小五郎が新一達とそうなった理由とその気持ちの差についてを知り、相当なズレがあることを聞いて理解していた。新一達が頑張ろうとすればするほど、確実にドツボにハマっていくだろうとも。

だからこそそういった事を考えた上で英理は小五郎と話し合いをし、自分が新一達と付き合う役回りを引き受けるからこのまま別居の形を続けようと切り出し・・・小五郎はその発案にすまないと頭を下げて、了承を返した。最早小五郎自身もその時には二人との付き合いなど出来るわけもないと考えていた上で、英理は自分もキツい部分はあるが小五郎を将来的に孫が生まれて以降の事も考え、無理に付き合わせるような事をしない方がいいと考えたのだ。

そんなやり取りが裏にあったことなど知らずに蘭は小五郎と英理の二人がまた一緒に住めるようにと頑張ろうとしたが、それは英理の昔とは違う強い意志での拒否ではね除けていき・・・そうしていく内に二人は結婚し、その後に恭弥が産まれたのである。









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