焔に触れお嬢様の目は変わる

「・・・勇気を持つことが悪いって言ってるんじゃない。人生の中じゃこんな判断したくなくてもこう判断しなきゃどうしようもないなんて事は突然訪れる物だから、勇気は持たないよりは持っている方がいいとは思う・・・けどあんな戦う手段も無いちっちゃくてまだ考える力も育ちきってない子ども達に、大人を頼るんじゃなく自分達なら大丈夫なんて言えるような自信や勇気なんかつけさせていいと思うか?犯罪者や危険人物を相手にして大怪我や死ぬことを覚悟させてでも行動させていいなんて思うか?・・・答えろよ、新一」
「っ・・・そんなこと、言えるはずねーだろ・・・」
「言えるはずねーって言う考えがあるんなら、なんで子ども達を自分から離すこと・・・いや、自分が子ども達から離れる事を考えなかった?この前のペンションの件からだけじゃなく、何回も何回も危険な目に遭ってきたのは聞いてる・・・だったらこそ、子ども達の為にも自分と関わらせるようなことは止めたり距離を取るべきだって考えを持った方がいいって思うべきだったはずだ。それなのにそう思わなかったってことは・・・今までが大丈夫だったからこれからも大丈夫だなんて自分の事も含めて思ってたどころか、よくある事だから別に気にする必要なんてないって自分が離れることが頭に過ることすらなかったんじゃないのか?」
「っ!!」
そうして冷静な声色に戻して話を進めていくルークに新一はどうにか声を絞り出す形で答えはするが、その後に続いた最後の問い掛けの言葉に絶句してしまった。
「・・・どうやらそれで間違いなさそうだな。今まで自分もそうだし蘭もあの子ども達も誰も、自分に近しい人達は誰も死なずに済んだどころかトラウマすら持つこともなかった。だから自分はここにいて黒づくめの男達を追うためにも、小学生の生活を送りながらおっちゃんの元に居続けて奴等に近付くまでこの生活を続ける・・・って言葉にして思いはしなくても、そう感じてきたんだろうな。けどだ・・・」



‘グッ!’



「ルーク!?」
「がぁっ・・・!!」
・・・新一の反応を当たりと見たとルークは話を更に続けていくのだが、途中で話を止めたかと思いきや・・・目にも止まらぬ早さでルークは新一に近付いて服の襟元を左手で掴んで高く宙に持ち上げると、蘭の悲鳴染みた声と新一の苦悶の声が響いた。が、すぐにルークはそこから新一に何もせずに地面へとそっと降ろした。
「ぐっ・・・!」
「・・・いきなり驚かせたり苦しいことをしたってことには謝らせてはもらう。ただなんでこんなことをしたのかって言うなら俺がその気だったらお前はもう生きていないってこともそうだけど、もういい加減運が良かったからお前やその周りの人達が死んでないだけだってのをちゃんと認識しろって言いたいんだよ。特にペンションでの事に関しちゃ、マジで俺が間に合わなかったら最低誰か一人くらいは死んでてもおかしくなかったってことはな」
「「っ!!」」
新一は首元を手で押さえつつも何をするのかと鋭い視線を向けるが、ルークが返してきた言葉に怒りを浮かばせていた蘭もまた共に息を呑むしかなかった・・・事実ルークがいなければどう少なく見ても誰か一人は確実に死んでいたのは確かだった状況であったことは否定出来なかったと。
「・・・蘭。お前も否定出来ないだろ。今の俺の動きに反応出来なかったってのもそうだし、あの時の犯人にもやられてしまった事は」
「うっ・・・」
「・・・あんまり自分で言うのもなんだけど、俺は少なくとも蘭よりは強いって自信はある。そしてあの時の犯人も蘭より強かったけど、もしもこれ以降にここでの話なんて気にしないって今まで通りの活動を続けてくってなった時・・・事件の犯人が蘭より強い人で俺がいない時に今新一にやったよう瞬時に動けないように捕まって、刃物で突き刺すなり地面に思い切り頭から叩きつけられたなら・・・その時にはもう命はないんだぞ。お前自身もそうだし、新一もあの子ども達もだ」
「っ!!」
そこで今度は新一にではなく蘭に話し掛けるルークがお前より強い相手だったならと仮定したもしもの話に、たまらず顔を青くしてしまった・・・自分だけでなく周りに新一も命が失われるという、自分なら大丈夫という幻想など持てない事例を併せて出されたことに。









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