いつかを変えることの代償 前編

・・・それで小五郎と英理は離婚をすることになった。ただ英理はその時に戸惑いというか逆に考え直さないのかといったように小五郎へと言ってきたが、その言葉に揺れて離婚を取り下げても似たような事が起きれば似たような事になる・・・そう小五郎は思った為に、その言葉は却下した。そして言葉にこそしないが、蘭辺りに何か言われたとしても再婚という選択もしないようにしようと。

そんな風に小五郎は英理とちゃんとした形で離婚をしたのだが、その数年後に小五郎の耳に娘夫婦が別居をしたとの連絡が新一から入ってきた。何でも小五郎が話を聞く限りでは蘭の要望通り仕事のペースを変えずにいたため、怒った蘭は子どもを連れて英理の元に向かったとのことだ。

それで新一からどうにか出来ないかとの相談を受けたのだが、小五郎はその相談に関しては新一が時間を取れないならどうしようもないとしか返せなかった。蘭からすれば新一が家族と共にする時間が必要なのであって、それが取れないままに分かってほしいという言葉だけで蘭が納得するとは小五郎はとても思えなかった為に。

そしてそれで小五郎は何かあれば解決にはならなくても話くらいは聞くと新一に言ってしばらくの時を過ごしたが、結果として蘭と新一は離婚・・・その背景には英理が自分の元で孫と一緒に暮らせばいいと言ったことから、蘭が離婚に踏み切ったのだと小五郎の耳に入ってきた。

この辺りは英理が自分と離婚をした上で再婚を数年内に申し出なかった事から、男というか夫という存在に幾分か愛想を大分無くした事に加え、英理自身も歳を取って寂しさを感じて娘に孫を引き取ったのだと小五郎は感じていた。

そしてその上で新一が小五郎の元に来て復縁出来ないかと切実に願う相談を持ち掛けてきたが・・・小五郎は自業自得だと返すしかなかった。結局は探偵としての仕事を優先して蘭に家族として理解を求めるだけにしか出来なかった新一の責任でしかないと。

そう聞かされ新一は辛そうな顔をして小五郎の元を去り、以降はもう小五郎の元を訪れることも連絡をしてくることも無かった。その事にもう新一との関係性も途絶えたのだと理解して悲しくなったが、もう下手に新一や蘭達とのコミュニティを続けるよりは辛いことも少なくなる・・・そう小五郎は思うことにして、以降は蘭達との関わりを持たぬまま過ごし・・・60の歳になった次の日に目覚めると、何故か前の記憶を持ったまま小五郎は過去に戻ってきたというわけである。









「・・・う~ん、この本は正直微妙だな・・・」
・・・鬱な気分からの掃除も終わり、依頼人が来ない事で椅子に座り文庫サイズの本を小五郎は読んでいた。









・・・過去に逆行した小五郎は戸惑いはしたが、まだろくに言葉も喋れない時期だったことがある意味幸いして、混乱したということは子どもが一時的に不安になっているだけと見られた。

それで怪しいと見られることもなく冷静になれる時間も取れた小五郎は、自分の置かれた状況を自分なりに分析しようと前世では縁の薄かった本へと手を伸ばした。タイムスリップに逆行関連する本だったり、そういった事がテーマの創作物・・・ライトノベルなどにも手を伸ばす形でだ。

最初こそ自分の置かれた状況を知る為や知識をつけるためにやむ無し程度に手を出した物だったが、子どもの体で元々小五郎が趣味としていたギャンブルに酒にタバコ・・・そんなものを楽しむことなど出来るはずもなく、精神もジジィと言って差し支えない年齢になっていた小五郎が子どもの趣味や遊びになど興味など持てず、そういった本で知識を身に付けようと集中していった結果として、今となってはもう暇な時はそう言ったジャンルを主とした本を読むのが趣味となってしまっている。昔の癖がそのまま残る形でだ。










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