焔に触れお嬢様の目は変わる

「・・・流石に俺もそれはどうなのかって気持ちは浮かんだよ。ただいくらなんでも自分と何の関わりもないどころか戸籍も何にもない存在を自分の親戚だって嘘をつく理由なんて、どう少なく見たってそいつに関わりがあるからそう言ったとしか思えないだろ。それに有希子さんとはそんなに会ったことは俺はないけど、蘭もそんな怪しい子どもの事をただ面白そうだとかって感じだけで嘘で庇って誤魔化すような人だとか流石に思わないだろ?」
「それは・・・確かに、言われてみれば・・・」
ただルークがそう考えた理由についてを話していくと、蘭も力は無くとも否定出来ないと声を漏らした・・・有希子は新一という年齢の子どもがいるにしては落ち着きが然程なくて愉快犯気質な所があるが、それでもルークの言ったよう見ず知らずの会ったこともないような子どもを庇う程人に対して無警戒だったり無配慮な事をするような存在じゃないと。
「そう。だからさっき言った二つの可能性について有希子さんや優作さんが関わってるって感じたんだけど・・・流石にあの二人がクローン技術に自分の子どもの細胞を使って実験をしたなんて考えたくないって意味で、まだ新一が何かの拍子で小さくなったからそれを誤魔化す為に工藤家全員で協力している上で、哀も誰か分からないけど小さくなった感じになった可能性の方が高いって思ったんだけど・・・」
「っ・・・!」
だからこそそこを考えていった上で心情的な部分もあるがと言った所で言葉を区切ってルークが視線を向けると、新一はたまらず体をビクリと震わせた。
「・・・なぁ。お前が自分の正体を言いたくないって気持ちになってるだろうってのは何となくは分かるんだよ。けどここまで来たんだから、いい加減自分の事について言えよ。じゃねーと毛利さんはこのままお前の事を鈴木財閥に身柄を引き渡すって決めるってことだぞ」
「なっ!?ど、どうしてだよおっちゃん!?」
「当たり前だろうが。確かに俺もお前の事をただ預かってただけでろくに怪しみもしなかっただろって言われても仕方ねーかもしれねーが、それでもここまで知っちまったからには今知った事を全部聞かなかったことにして今後もお前を今まで通り預かるなんて言う気になんかなれるわけねーだろ・・・だからここで何も答える気がねーってんなら即行で俺はお前を追い出して、後の処置は鈴木財閥に任せる。俺から言わせりゃ正体不明の奴の言うことなんか聞く意味はねーどころか、正体も聞かずにここにお前を残すなんざもう恐ろしくて仕方ねーからな」
「っ・・・!」
それで微妙に疲れたように何も言わない場合の事を言うルークに新一は完全に素の口調で小五郎に驚愕の声を向けるが、冷たく当然だろうという気持ちと顔を揺るがさずに返していくその様子にたまらず苦々しげに歯噛みする。
「さぁ、どうするんだ?言うのか、言わないのか?」
「っ、分かった!言う、言うよ!俺は新一だ!クローン人間なんかじゃなく、俺は体を小さくされたんだよ!」
「・・・ようやく白状したか・・・」
そうして最後とばかりにルークがどちらを選択するかと聞くと、とうとうとばかりに新一は自棄になったといったように自分が新一だと認めたことにまた疲れたような表情を浮かべた。
「っ!・・・本当に、新一なの・・・!?」
「蘭・・・そうだよ、俺は新一だ・・・」
だがそんなルークと違いまだ信じられないという気持ちで声を漏らす蘭に、新一は諦めに力を失ったまま頷いて返す。









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