いつかを変えることの代償 終幕(前編)

「そうね。でも当人達にはそんな自覚はなかったし、言っても効果はないというか信じることは無かったでしょう。自分達が離婚した後にその事を思い出すかどうか、それでこういうことなのかって思うか思わないか微妙な所でね」
「確実に思い返して後悔するって言わねぇのかよ・・・」
「離婚しても二人が二人ともに意地を張って自分は間違ってないって言いつつも、どっちもがどっちもに未練があったのはおじさんの方がよく理解してるんでしょう?もしそれで理解するんだったら完全に相手側への気持ちが無くなって冷静に相手の事を見れるようになった後の事だと思うけれど、あの二人がそうそう簡単に気持ちを切り捨てれるとは思えないもの」
「あ~・・・そう言われっとなで~・・・」
志保はまた仮定の上で二人がその言葉に対して思い返した行動を取る可能性が相当に低い事を口にしていき、小五郎はまた否定を返せない。新一は勿論だが蘭も諦めが悪い部類で、自分の気持ちが間違いであると簡単に認められないだろうと。
「だからというか、さっき私は言ったの。そういった妃さんに対しての疑問を持たなかったのかということに、誰か別の相手がいいか考えなかったのかって」
「・・・正直疑問に感じちゃいなかったのは確かだが、その言い方だと蘭には新一じゃない別の相手が良かったみたいに思うんだが・・・」
「えぇ、実際そう思ってるわ。それは妃さんだけじゃなく、工藤君も当てはまる形でね」
そこで志保が先程の発言の意味についてを改めて言い、意図を理解した小五郎は後者・・・相応しい相手は別にいるのかという部分に反応し、志保は頷く。
「そもそもの二人の離婚の原因はあまりにも家に帰ってこない上に、帰ってきても長い間家に留まらない工藤君の一家の長としてはあまりにも奔放な行動・・・ならそこから考えると工藤君に合うのはこの二種類の内のどちらかで、まずは工藤君が帰ってこないことを当然の物として家を守ることに専任して工藤君を放置出来る人で、もう一つは家で帰りを待つのではなくむしろ共に事件に足を運んでくれるようにして積極的に側にいる人・・・そのどちらかだと私は思うわ」
「・・・蘭が前者には当てはまらねぇ理由は、新一を放置出来ねぇからってことか・・・」
「えぇ。彼女は一途に信じて待ち続けるといっただけでなく自らも行動することを辞さないバイタリティがあるけれど、かといって家に全く帰らないことを苦にしないタイプかというとそうでもない・・・言ってみるなら今上げた二つのタイプの中間点みたいな性格ね」
「・・・待ち続けるのは嫌だがかといって動き続けるのも嫌・・・蘭の性格ならそうなるか・・・」
「その条件に当てはまる人物でおじ様が知る人物は誰かって言うと前者は志保で、後者は世良さんって所でしょうね」
「宮野に、世良の嬢ちゃんか・・・」
そこで先程の発言の意味についてを口にした志保に小五郎も意味を理解し、新一に合うタイプについての話になった所で園子が出した名前に小五郎も納得した様子を浮かべる。






・・・世良とは赤井の妹であり、頭の良さとしては単純に小五郎より上の存在である。その性格は好奇心旺盛で物怖じせず、探偵として新一達と事件に対した際は協力しあって事件を解決することもしばしばあった。

そんな世良は新一と相性もよく、事件に対して積極的に解決に向かおうとする姿勢もある。ただ志保同様新一が結婚する頃には小五郎は縁が遠く離れていたために世良のその後については詳しくは知らないが、それでもたまに顔を合わせていた時の様子に加えて園子が新一に合うといった事から然程性格は変わってはおらず、組織と関わったことから来る事情が消えて家族と言う枷がないなら、新一と共に動き回り夫婦でうまくやれる可能性はある・・・そう小五郎は感じていた。









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