いつかを変えることの代償 終幕(前編)

「工藤君の事件であったり厄介事を引き付ける才能というか、吸引体質は相当酷いと言っても過言じゃないわ。そして妃さんはその全てとは言わなくとも昔からよく付き合ってきて、その度々に吊り橋効果のようにドキドキしてきたんでしょうね・・・この辺りは私よりも鈴木さんの方が知っていると思うけれど」
「実際新一君といる時の蘭はイキイキと言うか、退屈してるって感じじゃなかったわね。まぁ流石に事件を前にしたらそういったことばっかり考えてられる訳じゃないけど・・・まぁとにかく、そんな新一君と蘭は長い間一緒にいたわけだけど年を取るとどうしたって慣れって出てくるのよ。また事件かって前のようにドキドキするとかってより、うんざりするって形でね」
「あ~・・・まぁひっきりなしに事件に巻き込まれりゃそれはそうなるわな・・・特に結婚してからも家の事をそこまで気にした様子もなかったって聞いたし、蘭からすりゃうんざりもするか・・・」
志保と園子はいかに吊り橋効果があったかもだが年月の経過についてのその変化も口にし、小五郎は蘭の立場なら分からないでもないと頷く。






・・・小五郎の感覚はどちらかと言えば一般人寄りだ。事件や死体に対する耐性は高いとは言えるが、だからと言って事件があるならと自分から直行するまでの性質はない。むしろ今となっては下手に自分が捜査に首を突っ込めば捜査をかき乱すような事をするつもりはないどころか、血生臭い事件には偶然でも出来るだけ関与したくないと小五郎は思っている。

だが新一は今も前と変わらず事件に対して前のめりになる姿勢に関しては変わってはいないと言う・・・園子や志保が言うように蘭が吊り橋効果で新一と一緒にいることを事件のドキドキと合わせたとするなら、それは確かに新一に惹かれる要素としては大きな物だと言えるだろう。それこそ志保が言ったように新一の事件吸引体質は相当に酷いために、数をこなせばそれだけのドキドキがあるために。

・・・だが刺激は相当に酷い物でなければ慣れるのが人であるし、年を重ねて立場が変わればまた人は変わる。そして何より言えることとしては、蘭自体は新一程事件に向き合おうというような心意気に姿勢はない。むしろ小五郎寄りの感性の持ち主であるということだ。






「どんなに好きだからとか彼らしいと思ったところで、過ぎた薬は却って毒になるか耐性がついて効きにくくなるのがオチ・・・おそらく組織と関わることが無かったら工藤君達は結婚までは辿り着いたとしても、以降に離婚か別居に辿り着くまでの時間は前よりも短かったでしょうね」
「・・・何で組織と関わらなかったらそうなるんだ?」
「単に事件と関わるのとは別の刺激があったからよ。工藤君からすれば正体を隠しつつの想い人との同居で、妃さんからすれば連絡は取れはするものの直接会えないジレンマがあって、時折二人はある意味では劇的とも取れる形で出会う・・・言ってみればドラマティックな遠距離恋愛をしているような気分だったと思うわ。組織と相対してる間の二人の間柄に関してはね」
「あ~・・・蘭は元々からそういった物が好きだったが、新一は恋愛事っつーか困難だったりすると燃えるってタイプだったからな・・・そう考えると組織と関係してる時ってのは確かにあいつらの恋ってヤツにはよかったんだろうが、それは一時的っていうか先送り程度にしかならなかったってのか・・・」
その上で志保が組織との相対が新一達の恋愛が長引いた理由とその根拠を語り、小五郎は一層凹む気持ちを抱く。それが新一達の最終的にハッピーエンドに結び付くような結末ではなく、一時しのぎでしか無かったことに。









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