揺れぬ正義を持つ狼の目 後編

「言っておくがそんな態度をその人物に取らせたのは工藤新一の言う通りにして、結局その相手にいざとなったら助けてほしいといった話すらせずに済ませた工藤優作の甘さだ。その相手が工藤優作から事実を聞かされていたならその相手がどう動いたかは別にしても、この件に関して無関係を貫けずにやむを得ないという形ではあっても関わらずにはいられず、工藤優作の為に動かざるを得なかっただろうからな」
「あぁ・・・自分達というか新一君ならうまくいくだとか見守ろうみたいにすると同時に、その相手を利用するつもりはなかったにしろいざという時の後ろ楯になってほしいと予防線用の話にも出してなかった不手際を言っているんですね?」
「そういうことだ・・・まぁ今となってはそんなことはもう後の祭りな上、秘密裏に工藤優作が自分達の境遇を不服として動くのであれば次はないようにはしてある。そしてその時が訪れたとして日本でになるか外国でなるかは分からんが、日本で行動を起こしたならそちらの仕事だ。小説家としての仕事や立場を利用して日本に来た際の工藤優作が行動を起こした場合はな」
「えぇ、そこは厳正に対処させていただきますよ。こちらもそのような事をされてはたまったものではありませんからね」
そうしてその人物に対しての事から以降の工藤一家に対しての対処の話となり、安室が自信を覗かせる微笑を浮かべながら頷いてちゃんとやると返す。
「ならいいが、後は何か言うことはあるか?無いなら俺は飛行機の時間に間に合わせるようそろそろここを出るぞ」
「・・・個人的な事としていくつかお聞きしたいんですが、貴方のその強さはなんなんですか?・・・僕も人並み以上に鍛えているという自負はありますが、赤井を捕縛した時もそうでしたが組織との対決の際の貴方の動きは尋常ではありませんでした。特にジンを捕まえたあの動きの凄まじさは、正直僕も見ていてゾッとしました・・・ジンの拳銃の弾丸を見切り、赤井を捕まえた時以上に容赦なく地面に叩き付けたあの動きは・・・」
そんな言葉に大した興味もなさそうに話すことは終わりなら行くとばかりに斎藤が言うと、安室は引き留めつつも冷や汗を浮かばせつつ問いを向ける。何故そこまで強いのかと。






・・・この数ヵ月で組織の事を調べていくと共に、段々と追い込んでいった斎藤と安室達は組織のボスの居場所を発見するとそこに決戦だと人員を揃えて向かった。しかし組織もそれをただ黙って見ている訳ではなかった。

主だったコードネーム持ちもボスを守る為にその居場所の周辺の警護につき、公安とインターポールの連合軍を迎撃しようと動いていき・・・少なからずの被害を受けていった両者だったが、それでも人員を揃えていったことに最終決戦ということから一歩も引かずに連合軍は先に進んでいった。そしてその中で最も印象深い働きをしたのが斎藤であった。

確かに組織側の抵抗は激しい物であって、自分達の元には近付けまいと銃弾の雨あられといったような状況だった。しかし斎藤はその中で援護を受けつつ銃弾をかわしながら先陣を切って組織のアジトの中に入っていき、なんとか後をついていった安室が見たものは・・・組織の人間がことごとくアゴやらにアザを作って道中倒れている物でありその先を抜けると、斎藤がジンと相対していたのだがジンが銃の引き金を引いた瞬間に赤井に対して取った動きをその時以上の早さで行い・・・銃弾をかわした後、赤井以上に容赦なく地面にジンを叩き付けたという光景だった。

その光景に唖然とするしかなかった安室だがぼうっとしている暇などないとばかりに斎藤が鋭い視線を向けてから先に進んだことに、ジンが完全に口を大きく開いて気絶したのを確認した後に捕縛を部下に頼んでから先に進み・・・最終的にボスを追い詰め、捕らえることが出来たのだ。

そうしてボスやジン達組織に忠誠を誓うコードネーム持ちが一斉に捕らえられたことにより組織は壊滅の一途を辿ることになるのだが、その一番の功労者が誰なのかと言えば間違いなく斎藤だと安室は思っている・・・しかし同時に感じもしたのだ。斎藤があまりにも強すぎる事への疑問もそうだが、それ以上に畏怖という気持ちを。









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