揺れぬ正義を持つ狼の目 後編

・・・人間の記憶とは曖昧な物であると同時に、自信があるかどうかで本当にそれが正しいのかどうかと移ろい変わりやすい物である。そしてそれが間違っているか正しいかと問わず、他者に断定されると自身もその言葉に左右される物だ。

そういったように考えれば『江戸川コナン』が存在すると考えているのがかなり限られた少数だとなったなら、本当にそんな子いたのかだとか別に覚えてないといった声に流される可能性は否定出来ないだろう。だが『江戸川コナン』の存在はメディアを通じて大多数の人々が知ってしまっている。怪盗キッドという人物と宝石を盗む怪盗を度々撃退してきたキッドキラーという異名と共に、顔写真まで掲載される形でだ。

そんな状態で『江戸川コナン』なんて最初からどこにも存在していなかったと言ったように無理矢理に処理をしたなら、どこかで『江戸川コナン』の存在が話題に出た時・・・その情報の出方もあるが、誰もそんな子ども知らないし覚えてないという展開になどなり得ないどころか、下手に情報を消していたならどういうことだという声が人々から上がって騒ぎになる可能性もまた否定出来なかった。

だからこそ安室率いる公安としては『江戸川コナン』がいたという痕跡を完全に消すことが不可能だからそうしようとしない方がいいという考えになり、同時に変にまた『江戸川コナン』が話題に出ないような流れが出てこないようになってほしいと祈るしか出来なかった。主にまた怪盗キッドがでしゃばるようなことをして、キッドキラーの『江戸川コナン』の登場をと願われて話題に上がらないようにして欲しいと。






「ま、その辺りに関しては後々の手札に取っておけ。工藤新一が何かしらの不満を言ってきたならその後始末をしたこともそうだが、『江戸川コナン』は工藤家の親戚と言ったのはお前の関係者なんだから追求が来たなら他ならぬお前やお前の家族がやったことだから、お前が対応するしかないんだとな」
「そうですね・・・そうすることにしますが、その新一君の両親についてはどのようになったんですか?今回こうしてこの場を設けたのはその後の情報交換の為なので、今度はそちらの番ですよ」
斎藤はそこで慰めるでもなく淡々とそれを逆に利用することにしろと言えば、安室も確かにと手を退けて頷いた後に斎藤の方に話を聞きたいと気を取り直して口にする。
「なんてことはない。基本的に奴ら二人には今まで同様の暮らしを続けるようにと達しを与えたくらいだ・・・と言っても工藤優作が持っていたツテに関してはもうインターポール側から組織に関連する事柄こそ言わなかったが、重大なペナルティ行為を工藤夫妻が行ったと仄めかすような事を伝えれば、あっさり自分は何もしないと答えたとのことだ。この辺りはその相手も色々と多方面に顔が利いていたのもあって、友人関係程度の相手を是が非でも守るだとか助け出したいとまでは思わなかったんだろうさ」
「成程・・・それなりの立場にいる人物であったからこそ、損得勘定をした結果としてドライに助けるようなことはしないというよう損切りすることにした・・・といった所ですか」
「だろうな。話を通した人物の言葉によれば少しは考える素振りを見せたらしいが、それは迷っているといった姿を印象付けたかっただけでこちらを敵に回す気は話を聞いた時点から無かったと判断したらしい」
「それはまたなんというか、という話ですね・・・」
斎藤はその声に答えていく中で優作のツテの人物についての話をしていき、その中身についてに安室は何とも言い難いといった表情を浮かばせた。大人における友人という関係の薄っぺらさを聞いてしまい。









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