揺れぬ正義を持つ狼の目 後編

・・・そんな新一から場面は移り、とある蕎麦屋に変わる。






「・・・どうだ、経過は?」
「えぇ、服部君に関しては話を無事に通すことが出来ました。彼も彼で新一君と関係していた上で組織の事はある程度知っていましたし、今の新一君の状態を不用意に知ったならイレギュラーな行動を取りかねませんでしたからね・・・まぁ新一君が伝えても問題ないと判断したからなのでしょうが、僕が公安だと軽々しく伝えていたのは今となっては正直面倒だと思いましたよ・・・それこそ彼を放置していたなら妙な事態になりかねなかった可能性を大いに感じさせられましたからね」
「だがようやく後片付けもこれで終わりと言うわけだ」
「えぇまぁ。と言っても結構苦労したんですがね・・・」
・・・蕎麦屋の座敷の個室にて。
座敷にていくつかの料理が乗せられたテーブル越しに向かい合う斎藤と安室の二人は主に服部の事について話し合うのだが、安室はたまらず疲れたとばかりに頭に手を当てる。
「・・・ハッキリ言って新一君が『江戸川コナン』としてやってきたことが数が多すぎて、誤魔化した方がいいものかそうでないものかの判断をつけるのに苦労しました。特に『江戸川コナン』として怪盗キッドとやりあっていたことに関してからメディアに顔写真やらが残りすぎていたので、最早人々の記憶に記憶媒体から『江戸川コナン』を消せない事から下手に証拠隠滅をすれば面倒なことになりかねないということで、こちらにはノータッチで行くかどうかというのを決めるのは」
「それでその結果として公安は何もしない、となったんだったか?」
「えぇ。そもそもは新一君が『江戸川コナン』として首を突っ込んだ事であるのに、そんな自身の後始末についてなど自分でどうするかなんて全く考えていなかった・・・というよりは組織を壊滅させたなら『江戸川コナン』は実は自分だったと、マスコミに大々的にその過程やらを自分がどう見られるかなんて考えずに発表しようとしていたのは今となっては簡単に予想がつきます。前に話をしましたがそれらを明かせば確実に他の裏社会の組織やら、若返りを望む人々の事など考えずに」
「そしてそうなっていたなら早急に工藤新一もそうだが、場合によっては宮野志保やその他の関係者の隔離に口封じをすることになって・・・言うことを聞かないと言い出していた場合は殺す必要があっただろうな」
「えぇ、あまりそんな事はしたくはないですが・・・もしもの時にそうしそうだったのは間違いなく新一君で、こちらの言うことを聞いていたとはとても思えませんからね・・・」
そのままの体勢で安室は斎藤と話を続けていくのだが、心底から面倒だったと言わんように疲れた声を上げていく。






・・・今安室が漏らしていったが、新一が『江戸川コナン』としてやっていったことやその痕跡を消していく作業は言葉だけで言うなら簡単な事のように思えるが、実際はかなり面倒という以外の何物でもなかった。それこそ新一が思うように自身の手で元の体に戻ったなら、『江戸川コナン』の後片付けなど新一が全部出来たとは到底思えないというくらいにだ。

まぁまだ表向きの立場の為に通っていた帝丹小学校から『灰原哀』も含め、転校になったというように出来たのはいいだろう。文明が進んだこの時代では携帯電話を小学生低学年から持っていることも珍しくないが、行き先も含めて電話を解約すれば連絡が取れなくなったと誤魔化すことは別に難しくないのだから。

・・・しかしそういった身近な付き合いはまだしも、メディアに度々顔を撮られる事になったことに関してを誤魔化すことは難しいどころか、それらが全て嘘だとか無かったものだと誤魔化すのは公安の力どころかどんな機関を持ってしても不可能としか言えなかった。









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