いつかを変えることの代償 終幕(前編)

「・・・おじさんには申し訳ないって気持ちになるけれど、私ももう工藤君に毛利さん・・・いえ、今は妃さんになるけれど二人には関わるつもりはないわ」
「・・・どうしてだ?話に聞く限りじゃ、園子と違ってオメーはあの組織が潰れて以降は二人とあんま関わってこなかったんじゃなかったのか?」
「・・・工藤君達には感謝はしているし、その気持ちは今も変わらない。彼らがいなかったら私はろくに人として生きるような状態になっていなかったもの。だから私も彼らへの恩返しも含めて、何かあれば彼らを助けたいと思ってた・・・でもそうして時々ではあるけれど彼らの状態について聞いてきた私は次第に思うようになったの。工藤君は自分のやりたいことばかりを優先させて、妃さんはそんな工藤君相手に酔っているんだって」
「は?・・・いや、新一について言ってることは何となく分かる・・・だが蘭が新一相手に酔っているってどういうことだ?」
そんな志保が自分が新一達に対して感じたことについて話を進めていくのだが、蘭についての言葉に関して聞き捨てならないと小五郎はそう思った理由を問う。前は蘭の父親であった身だが、そんな風には感じたことはなかったために。
「・・・以前にわずかでも感じたことはない?なんで娘は姿を見せなくなった工藤君に対して想いを募らせてるのかとか、別の男を探せばいいんじゃないかって」
「は?・・・ん~、当時の俺としちゃあんまり蘭に男の影ってヤツがつくのなんか嫌だって思ってたな・・・それで表向きはともかくとしても、あれだけ新一にピッタリくっつく蘭の姿をよく見てたもんだから新一が抱えてる事件ってヤツが無くなりゃ、くっつくのが自然な流れだろうってどっかで思ってたんだが・・・それがなんだってんだ?」
ただ即答せずに意味深な質問を向けられるが、それでも小五郎は正直な考えを思い出しながら返してどういうことかと再度志保に問う。
「・・・想う相手に一途な事を悪いと言うわけではないわ。それが両想いであるなら尚更・・・でも今言ったように工藤君に悪気はないのだろうけれど工藤君はそれを自分の気持ちだけでしか表現に行動が出来なくて、妃さんはそんな工藤君を良くも悪くもらしいと思っている・・・それがいい方に傾くならまだしも、悪い方に傾いたらその影響はこちらにも来るの」
「・・・何か言ってることの意味がイマイチピンと来ねぇんだが・・・」
「要は新一君の態度次第で蘭は変わるってことよ。それもプラスして言うなら時が経てば経つほどに蘭の機嫌が悪くなるって形でね」
「園子・・・」
「蘭ってね、良くも悪くも新一君のそういったらしさがあったから彼に惹かれてたの。他の男の人にはない物を持つ彼にね」
「でも彼のそのらしさに惹かれるのは、言ってみれば吊り橋効果のようなものよ。何もない所で会う時と吊り橋の上で会う時の心拍のドキドキを比べると吊り橋の上の方が数が多く、その心拍のドキドキをまるで相手に対して抱いているかのように錯覚する形でね」
「・・・それってつまり、蘭は新一に対して錯覚で恋してたってことかよ・・・」
志保はそんな問いに直接答えを返さずに話を進め、途中で園子も入りいかに新一の行動に蘭が感じているのかを話していき、小五郎はその中身にうなだれそうになる。
「錯覚でも勘違いでも恋は恋よ、おじ様。そのこと自体は別に悪いことではないというか、結果が良ければ錯覚でも勘違いでもいいのよ」
「でもそれがいい結果に繋がらず、錯覚から覚めたのが妃さんと工藤君達の結果よ」
そんな姿に慰めというよりは正確に言いたいことはその先にあると園子と志保は告げる。









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