揺れぬ正義を持つ狼の目 後編

・・・幼稚というように言われた新一は怒りこそ最初の一瞬は浮かんだが、目の前のリストにある総合された金額を前にしていやが上にでも冷静にならざるを得なかった。何せ高校生探偵を名乗ってはいるが実際に依頼料をもらうようなちゃんとした仕事など一切したことがないし、親からの送金で満足していて探偵以外の職に就く気などバイトですら皆無な新一は、送金の生活費以外として出されたお小遣いにお年玉といった物以外の金を自分の金としては所有していない・・・なのにそんなものなど払う必要ないだとか親に払ってもらうというような開き直りとしか言えない事を言ってしまえば、それこそ幼稚だと認めてしまうような物だったからだ。それだけの金を使ってもらってるのに、自分がやったことの責任についてなど一切考えてないまさに斎藤の言ったようなクソガキさながらの行為だと。

だからこそ新一は文句など言えないとならざるを得なかったと共に、文句を言わないなら金を払わなくていい事も含めて諦めて認めざるを得なくなったのである。宮野とはもう会えない上で表沙汰には話にしないという中身は何かという事の話をした上で、工藤邸に新一は帰される事になることに。

ただその際に赤井についてはどうなってるのかと安室に最後だから教えてほしいと言ったのだが、「下手に知ろうとしない方がいいですよ。FBIに伺いを立てるのはオススメしませんし、君はもう要注意人物として僕達にインターポールはマークしています。ですから変な行動はしない方がいいと忠告しておきますし、もう赤井の事は気にしない方がいいとも言っておきます」・・・という意味深な笑顔からの言葉を受け、新一もそれ以上は追求出来ないと考え質問を打ち切らざるを得なかった。どう考えても赤井は何か責任を取らされるような事をされている可能性が高いことを感じて。

・・・それでそうして工藤邸に戻された新一は落ち着くより先にすぐに隣の阿笠の元に向かい話をするのだが、安室達からの話があったこともあるが新一より先に戻されての生活でもう不用意な事はしないと考えるようになったと、若干げっそりするような様相を見せたその姿に秘密を黙ったまま生活して誰かを誤魔化し続けることもそうだが、安室達の話が相当に効いたのだと新一は戦慄した。そしてもう阿笠に無理をさせるだったり、協力してもらうといったことは望ましくないし・・・そうしてしまえばまた自身が幼稚なことをするのだと考えた。

その為に何かあったら話は聞くからと新一は言って阿笠の元から離れ、元の生活に戻るのだが・・・その難しさを様々に今新一も感じ取っているのである・・・もういない者達についてだったり、自分が何をしてきて何があったのか本当の事を言えないという苦しさを・・・


















「・・・て言うかさ~、お父さんまだ帰ってこれないって言ってるんだけどあんなに不摂生してたら当然じゃんって思うんだよね~。しばらく留守にしないといけないからってお母さんの所に行くように言われてお母さんの所に今は住んでるけど、お母さんも呆れてるのよ?」
「っ・・・気持ちは分からねーでもねーけど、おっちゃんは体の事を考えりゃいつどうなるかわかんねーってことでおばさんもそれで蘭を引き受けたんだから、あんまそんなこと言わねー方がいいだろ。それにそんなことを言いながらおっちゃんに戻ってきてほしいって言い続けてると、おばさんのとこにいたくないのかみたいに言うことになるから失礼になるんじゃねーか?」
「あ~・・・う~ん、それを言われるとちょっと辛いかも・・・」
・・・そうして『江戸川コナン』関連の話題から話は更に発展していく中、蘭が口にした小五郎の話題についてに一瞬息を呑んだようなリアクションになりかけた新一だったが、すぐに母親である英理に関して失礼じゃとすり替えるように言えばその狙い通り悩ましいといったように表情を変えた。
(おっちゃん・・・まだしばらくは戻ってこないんだろうけど、もし戻ってきた時・・・俺はどんな顔をしておっちゃんに会えばいいんだろうか・・・)
そしてそんな表情を見ながらも、新一の気持ちは蘭より遥かに落ち込まざるを得ない状態になっていた。小五郎に対しての気持ちで押し潰されそうになるほどの気持ちを決して顔には出さないようにする形で・・・









.
8/24ページ
スキ