揺れぬ正義を持つ狼の目 後編

・・・最初、新一もそうだが赤井も何故二人を連れてきたと非難を向けた。だが阿笠に関しては新一に様々な発明品を提供していた事から連れていくのは当然だろうと言った以上に、灰原の事を調べていく内に戸籍が無いことがすぐに分かった為、組織に関わって新一と同じような事になった誰かなのは斎藤との話から予想がついたから連れてきた・・・といったよう安室から言われた時、新一や赤井以上に絶句したのは他ならぬ灰原本人だった。

そしてそんな表情を見た安室は何か赤井達と君とでは知っていることと知らないことの差がありそうだと、まずは情報のすり合わせを行おうと話を始めた。赤井に新一は慌てて止めようとしたが、その姿に何か良からぬ物を感じたのに加えて今すぐにどうこうされるような気配を感じなかったのもあってか、灰原は多少乗り気な様子になる形でだ。

しかしそうして話を始めると、すぐに灰原はまた絶句することになった。と言っても安室や斎藤達に引いた訳ではなく、赤井と新一達が共謀して行った死体偽装の件もそうだが・・・安室が赤井達を連行した後に工藤家で見付けたという阿笠邸に関しての盗聴及び、見張りをしていたという形跡があったことにだ。

これらの話を聞いた時に灰原は何も知らないしどうしてそんなことをしたのかに何も自分に言わなかったのかと、新一達に叫ぶ形で問い掛けた。その答えに話す必要もないことを話す気はなかったからといった上で、お前の事が心配だったからだ・・・と赤井は返したのだが、そんなさも当然だとばかりに口にされた言葉に灰原は納得出来る筈もなく更なる怒りを向けた。この辺りはいくら本人に言えないからとはいえ、勝手に頼んでもいない心配をされた上に盗聴までするというプライベートも何もないことをしでかしたのだから当然と言えば当然だろう。

ただ話をその事に集中させ過ぎるわけにはいかないからと安室は自身やこの場にいない斎藤にここに連れてきた経緯に理由を説明した上で、君はどういった存在なのかと質問を灰原に投げ掛けると・・・自分達の事をどうするのかと聞いてきた為に組織に売るつもりはない上で正直に話してくれるなら出来る限りの便宜は図るし身の安全は確かだから安心するように言うと、少なからず疑いは残した様子ながらも分かったと自身のことについて説明を始めた。

・・・そうして灰原は自分が組織の中でシェリーというコードネーム持ちであったこと、姉である宮野明美が死んだことで新一が飲まされたという自身が作った薬を飲んで子どもの肉体になったことで組織の施設から脱出したこと、そして工藤新一が薬を飲まされたという報告を受けた時に死亡となかった為にもしかして生きているのではないか・・・と仮定して工藤家に向かって阿笠に保護された後に事情を新一と話し合い、そのまま組織を追うための今の生活を始めて今に至るとのことであった。

それらを聞いた安室はそこで話は終わりといったような灰原の様子に、時々新一が元の体に戻ったのはどういうカラクリなのか・・・といった質問をすると、灰原だけでなく新一も何故といった驚きを浮かばせた。だがそこで人の口に戸を立てきれる筈などないと斎藤側が情報を会得していたことを明かすと、灰原は納得した上で諦めたように自分が作った未完成の解毒薬だとパイカルについてを含めて話した。

そういった話を聞いた安室は最後に解毒薬を作れるのかと問い掛けると、灰原が元の薬のデータが無ければ可能性は相当に低い・・・といった返しをしたため、一つ納得した後に告げた。なら自分達が組織を壊滅するように動く傍らで薬のデータを手に入れるように動こうと。









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