揺れぬ正義を持つ狼の目 前編

「・・・僕の見立てでも蘭さんは新一君の事を知れば、ほぼ確実に新一君を擁護した上で毛利さんに様々に言うでしょう。何でお父さんは気付かなかったのであったり、新一を責めるのは間違ってるといったような新一君を庇うために毛利さんが厳しい言葉を言った場合は」
「そして探偵としての実力が工藤新一の操り人形になったからこその物だったからというのが分かった後でも、性格的にこういったように言うことは想像は出来る・・・新一がいないんならやっぱりダメだ、といったようにな」
「・・・毛利さんが色々と抜けていたということ自体は否定は出来ませんし、僕も失礼ですがそうだと認識した上で動いてきました。ですが流石に他人であっても親子であっても言っていいことに悪いことというのは存在しますし、そこで単なる口喧嘩で済むならまだしも流血沙汰になる程の喧嘩でになるということもそうですが・・・何より仲違いをした理由をどちらかからでも口にされる可能性が有り得るからこそ、蘭さんには決して事実を伝える訳にはいかないんです・・・蘭さんからしたら不本意でしょうが、毛利さんより彼女の方が断然に口を滑らせる可能性は高いでしょうからね・・・」
安室はそこから重い表情と声のままで蘭の事についてを口にして行き、斎藤の予想の声に一層重さを滲ませながら小五郎より迂闊な事をする可能性は高いと口にしていく。






・・・安室もそうだがちょこちょことポアロで顔を合わせていた上で話を聞いてきた斎藤も、蘭の性格に考え方については理解をしていた。新一に想いを馳せている事もそうだが、新一と小五郎のどちらが上かの格付けをするなら間違いなく新一の方が上だと軍配を上げると。

これは小五郎が嫌いだからと言う訳ではなく、新一が小五郎と同じ探偵と名乗った上で数多の事件を解決してきたからこそに想い人という補正も加わったからというのもあるが・・・そんな補正があるからこそ今まで話したような新一の非に関してを無いものというより、責任転嫁しかねないと二人は見たのだ。そしてその責任転嫁の相手が今まで操り人形の役割を担わされてきた小五郎であり、自分以外のその他に向けられると。

・・・こういった蘭がさも頭が悪いだとか視野が狭いみたいなことを多少なりにも付き合いがある安室は言いたくはなかったし、考えたくもなかった。しかし新一に対して恋に恋していると言ったような蘭の様子をその付き合いの中から伺ってきた安室は、斎藤からの慎重にいかねばならないという言葉もあって蘭なら大丈夫だという否定を返せなかったのだ。今の会話にあったような二人共に新一の事実を明かした際、そんなことはしないという強い否定など。

むしろ言われれば言われる程に安室はもしもの時の危険性を感じたのだ。小五郎と新一に対するイメージの違い、小五郎が話を聞いてどういったリアクションを取るのか、その上で蘭は新一の事を庇わずにいられるのかに、それで衝突した際に小五郎の気持ちを理解出来るのかに自分が悪かったと非を認められるか・・・と考えていくと、蘭が小五郎を相手にして素直に引くという光景が見えないと。

そしてそうなれば流血沙汰になるような事にまではならずとも、喧嘩で互いの意見のすり合わせが出来ない可能性が非常に高くてその場合に蘭が取りかねない行動が・・・母親である英理か、もしくは親友である園子辺りに『絶対誰にも言わないでね』と言った文言を用いての相談という名の事実の暴露である。

ここで問題になるのは相談された側がどんな行動を取るかも勿論そうだが、事実を暴露したということ自体なのだ。ただでさえ組織に組織を追う機関の数々が秘密裏に事を進めようとしているのに、それを本人からして重大であるにせよ他人に明かすのだから。

しかし安室の思う蘭ならそう仕出かしかねないと見たのだ。理屈を持って判断するよりも感情を持って選ぶ結論が、自身にとっての理屈であってそれが正解だろうというよう。









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