揺れぬ正義を持つ狼の目 前編

「赤井が大方話したが、そういった表沙汰になったら面倒になる話など挙げたら枚挙に暇がないくらいには出てくるのは確かだ。そしてお前に関して言えばその時にお前がどれだけ批難を浴びるか以上に、お前を庇いだてしようとする者達にも批難を浴びせようとしてくるだろう。何せお前がやったことは死体の偽装を始めとした自分が組織を捕まえたいという気持ちを優先した、ワガママという範疇に到底収まりきれん行動だ。そして毛利小五郎は実は自分が麻酔銃で眠らせて操って推理した物であって、毛利小五郎は実は名探偵なんかじゃなかった・・・などと発表したなら間違いなく毛利小五郎に対して好意的な言葉など向けられん。簡単に想像するだけでも何十などとの単位で収まらん数で出会った事件で眠らされておいて、なんでその事に気付きも出来なかったんだというその鈍さに能力・・・ひいては毛利小五郎という存在自体の否定といった言葉が来るだろう。そんな風に使われていった愚か極まりない人間が、名探偵など勘違いするなといったようなな」
「そ、そんな・・・そこまで言われるってのかよ・・・」
その赤井の言葉の流れを汲みながら話を斎藤は進めていくのだが、小五郎に訪れる可能性についての部分に新一は信じられないというように漏らす。
「さも自分は何も関係無いみたいな言い方をしているが、毛利小五郎が愚昧で騙し続けても問題ないからと隠れ蓑兼組織に近付く為の道具のように使い続けてきた奴が言えることではないと思うがな」
「道具、だと・・・!?」
「憤るのは結構だが、今の話から否定出来るような関係を毛利小五郎と結んでいるとでも言う・・・いや、失礼。一方的に何も知らせず利用しているだけの状態を対等であるか、何らかの条約関係を結んでいると呼ぶことは出来なかったな」
「っ!」
だがそこで皮肉っぽく、それでいて明らかに当て付けとして放った笑みと言葉に新一は浮かんだ怒りが一瞬で消し飛ぶ形で目を見開き静止するしかなかった・・・斎藤の言葉は気に入らないという気持ちはあれども、その発言の中身を否定出来る要素・・・特に協力関係にすら小五郎とは結ばれてはいないということを否定出来ないと知らされて。
「・・・まぁそういうわけだ。他にも言いたいことは色々あるが、毛利小五郎に関してだけでもお前のやったことは表沙汰には出来ん。そしてその他の事に関しても言うことすらはばかられる事はいくつも存在するが・・・これ以降もお前の活動を認め続けたなら、同じような存在やら物が生まれかねん上に水無のようにポロッとそれらを口にしかねん危険性がある。その為、お前はこの後公安の監視下で暮らしてもらうことになる。事が無事に済むまではな」
「っ・・・い、言いたいことは分かりました・・・おっちゃんを始めとしてやっちゃいけないことを俺がやったってことは・・・で、でもどうにか俺も奴らを捕まえる為に動きたいんです・・・だからどうにかならないんですか?」
「・・・ふぅ・・・」
「なっ・・・なんですか、そのタメ息は・・・!?」
斎藤はそれらの話をまとめるように公安の元で暮らしてもらうと言うと新一はまだ諦めきれないとなんとかすがりつこうとしてくるが、その様子に面倒そうに目を閉じタメ息を吐くとそれが気に入らないとばかりに食って掛かる。









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