揺れぬ正義を持つ狼の目 前編

「・・・そもそも何故こんな中途半端な形でしか二人というか工藤優作の助けを借りていないのかという疑問以外が出てこんな。もっと父親の力を借りればすんなりとは行かずとも、多少なりにもお前の状況の改善に進行は見込めただろう筈だ」
「そ、それは・・・お、俺は俺の手であいつらを捕まえたいから・・・」
「だから自身の思うような最低限の形でしか手や力を借りたくない、か・・・真性の阿呆だな」
「なっ・・・!?」
その様子に更に呆れたような様子を強めながら何故父親の手をもっと借りないのかを聞く斎藤に新一は何とか自身の意地からというように返すのだが、バッサリと阿呆の一言で返された事に絶句した。
「自分の手で組織の奴らを捕まえたいという気持ち自体は否定はしない。しかしそれでお前が両親の手を借りたくないと言うのなら、どんな風に苦しんだとしても一人で事を為し遂げるのが筋な筈だ。だがお前はさもこれは両親に手を借りたというわけではなく、必要なことだから例外だ・・・とばかりに赤井秀一達に関しての諸々を頼んで行動してもらっている。まぁそれ以外にも何か頼んだかまでは把握は出来てはいないが、それらはお前にとって自分で誰にも頼らず行動しているからこその結果と言いたいのかもしれんが・・・」



「そんなもの最早意地とすら呼べるものではない。お前にとってだけ都合や気持ちがいいだけの自己陶酔に自己満足だ」



「!!」
・・・そして今までの流れを容赦なく統括するように告げられた斎藤の言葉に、新一はたまらず衝撃を受けて顔を青白い物へと変えた。都合のいい自己陶酔に自己満足と、今までの強い意志を持って動いていた自身の事をそう断じられたことに。
「お前からすればさも自分は自分らしく組織との対峙やら、FBIに安室達といった面々と五分の立場でいるつもりかもしれんしその推理力が買われたということに関してはまだ認めてやる・・・しかしそれもこれも毛利小五郎に毛利家という隠れ蓑を自分のやりたいことの為に利用してきたからだろう。そして今まで操り人形として重ね上げさせてきたネームバリューは、最早お前が工藤新一として元に戻れたとしても取り返しのつかない領域にまできている。普通の探偵レベルが精々の毛利小五郎が、今までお前が来てから受けてきた謎を含んでいたり推理が必要になるような事件が起きた場合の依頼が、お前がいなくなった後にも雪崩れ込むように来ると予想出来る形でだ」
「なっ・・・!?」
「名探偵毛利小五郎という称号は最早下手な有名人より余程有名になっている領域にある上で、お前はその名探偵という称号に群がってくる依頼や人の中に奴らへ繋がる何かを見付けて自身に手繰り寄せるとでも思っていたんだろう。そしてそれは現実となって赤井達を始めとしたような成果へと繋がる訳だが・・・その反面としてお前が目的を達成した後、操り人形の糸から切り離されたただの人形に成り下がった毛利小五郎に訪れる結末が今言ったような事であり・・・ほぼほぼそれらを解決出来ず、毛利小五郎は凋落の一途を辿ると俺は見ているがお前はどう見ている?その後の依頼についてどうなるかをだ」
「っ・・・!!」
そんな行動についてを一部は成功とはしつつも毛利小五郎という存在についてを出した上での斎藤の話に、次第にただでさえ悪かった新一の顔色がより白い物へと変わって愕然とした表情に固定されてしまった・・・どう都合よく考えようとしても斎藤の話から考えれば、小五郎に訪れる未来などそうなる以外に考えがつかないということ以上に・・・そうすることにしてしまいかねない未来を、他ならぬ新一自身が招いてしまうということに気付き。









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