揺れぬ正義を持つ狼の目 前編

「言っただろう、そう判断したのは斎藤さんからの話があったからだと。今のこの場に僕の正体が公安所属の人間だと知る人しかいないから言わせてもらうが、警察の一員でもある身としては君の立場についてを考えれば保護をするのは当然と言えるだろう。まぁ表立って君の事を保護したとは色々とあって言えないから、秘密裏に何処かで暮らしてもらうことになるけどね」
「いやいやいや、そんなの俺が嫌だって言ったから保護は無しで進むでいいだろ!?体裁でそれを一度聞いとくくらいの感じでさ!」
「君ならそういったような事を言うのは予想はついていたよ。しかしこちらとしては君達を野放しに出来ない理由がある・・・それは、前に赤井が死んだことを偽装するために使った死体の出所だ」
「っ!?」
そんな声に動じず話を進める安室に新一は些細なことだというように抗議するのだが、そこで出てきたジョディ達が戻らざるを得なくなった原因・・・楠田の死体の事が出てきた事に、新一は思わずハッと息を呑むしかなかった。
「死体の偽装に使ったトリックに関しては前にこの家で『沖矢昴』相手に話したもので大方間違いないだろうとは想像は出来ている。しかし肝心の死体の出所もそうだが、その死体が誰なのかに関してはインターポールもそうだし公安も誰のものであるのかも見当がつかなかった。何せ顔で判定することはおろかDNA鑑定が不可能なレベルで死体が燃えてしまった物だからね・・・ある意味では赤井の生存を隠すためにここまでするのかと感心もしたが、同時に赤井が今こうして生きているという事実がある以上・・・赤井達には死体損壊に死亡の偽装に死体の調達、そして君や君の両親は共犯として片棒を担いだ事もだがそれらの行動を知りつつ潜伏場所を提供した・・・という罪が君達には存在するんだよ」
「つ、罪ってあれはあぁしないと組織に水無さんが殺されるからやったことで・・・!」
「ほう?ということは大方の予想だが、キールはFBIや公安以外の機関のスパイで君達の協力者といった立ち位置にいるということか・・・そしてFBIが監視していた病院から抜け出してきたという時、君達と協力関係を結んだといった所かな?」
「っ!」
そうしてその死体からいかに赤井達に新一達工藤家の罪があるのか・・・そう聞いた新一はたまらずに弁護の言葉を口にしたが、すかさずそこで漏れた水無という名に反応して推測していった安室にしまったと言わんばかりにハッとした。迂闊に水無についての事実を口にしてしまったことに。
「あぁ、心配することはない。キールの事を組織に売るつもりはないし、何ならこちらとしても協力してもらいたいという気持ちがあるから慎重に接触させてもらうつもりだ。と言っても赤井や君達に関しては諦めてもらうというようには言わせてもらうし、君達と共謀して死体を利用したという事実で彼女には協力してもらうように言わせてもらうけれどね」
「っ、卑怯だぞ安室さん!自分達はその事を利用するだなんて!」
「卑怯?・・・そんな事を言える立場にいるとでも思っているのかい、君は?自分達の為に死んだ人間の死体までもを利用するような事をしておいて、それを棚に上げて無いものと出来るとでも思っているのかい?」
「っ!?」
すかさず安室が水無には手を出さないと笑顔で口にしていくが、中身が気に食わないとたまらず新一は怒りに食って掛かる・・・が、瞬時に笑顔を消して温度を無くした反論の声にたまらず衝撃に身を仰け反らせた。









.
14/30ページ
スキ