揺れぬ正義を持つ狼の目 前編

「言われてようやく気付いたようだな。まぁその事について指摘するような誰かが周りにいなかった上でお前達の周りではよく事件が起こっていたことから、お前も含めた周囲の感覚は完全に麻痺していたんだろう。事情のある学生一人が一軒家を使わせてもらうようになったくらいは、事件じゃないんなら別にいいだろうし学生一人のことなど普通は気にしないだろうとな・・・しかしそういった不自然さは予てよりお前を疑っていた俺達からすれば、何事なのかという推測を進ませるには十分だった。そしてその中で確信出来たのは工藤夫妻は確実に『江戸川コナン』寄りの人物であること及び、『沖矢昴』も架空の人物であることから大方誰かの変装であるだろうことだったが・・・推測の段階ではあるが工藤夫妻、特に優作氏が『沖矢昴』に家を貸してもいいと信頼を置く『江戸川コナン』の正体が何なのかと考えた上で、工藤家についてを調べていく中・・・工藤新一の小学生ごろの写真を見つけ、眼鏡をしていないお前そっくりだとなった上で機械によって顔の一致が出来るかを試してみたところ同一人物だという結果が出た・・・という事から組織が怪しい薬の作成に手を出していたことは調べがついていたのもあり、現実離れしてこそいるが組織が作った薬により工藤新一が体を小さくされたのではないかという推測が出てきたんだよ。それなら工藤夫妻が家を貸し出すと決めたのも納得が行く上で、『江戸川コナン』という存在は本当は存在していない偽りで工藤新一が産み出した物だという推測がな」
「っ・・・!」
そしてチクチクとした指摘も交えて、ようやく『江戸川コナン』の真実に辿り着いた・・・そう語る斎藤の言葉に、新一は否定の言葉が出せずに歯を噛み締めるしかなかった。確信ではないにしてもそこまでの推測は確かな事実であったために。
「だがそこまで推測したのはいいが確信を得るにはまだ材料が必要だったことに加えて、お前とFBIの関係や行動が厄介だという話になった」
「っ、俺とFBIが何で厄介って話になるんだ・・・?」
しかしそこでパイポを咥え直しながら漏らした言葉に、たまらず新一は疑問の声を口にした。自分達が厄介になる理由が見当がつかないと。
「お前やFBI達の動きは全て把握していた訳ではないが、その動きから公安やCIAなど味方ではないにしても敵とも言えない機関と一時的にでも協力しようといった考えがあるとは見えないとこちらは判断した。そして俺達・・・つまりはインターポールとも協力しないだろうとだ」
「・・・どうして、協力しないなんて・・・」
「最もらしい理由を口にするなら先程までの理由を口にして協力をしてほしいと言ってもこちらを警戒することになり、協力はしないとなるだけならまだしもお前の存在についてどうするかという話し合いでFBI達と敵対するという可能性があったからだが・・・俺が感じたことを言わせてもらうなら、単純に自分達以外の他者に協力されたくないという意地・・・いや、ワガママを感じたからだ」
「え・・・?」
「何・・・?」
その理由は協力の拒否をしてくるのもだが、ワガママという言葉がパイポをしまいながら斎藤から出てきた事に新一もだが今まで床で黙りこんでいた赤井も戸惑いの声を上げた。何故そんな言葉が出るのかと。









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