揺れぬ正義を持つ狼の目 前編

「と言ってもお前の正体についてに関しては辿り着くのに色々と時間はかかった。何せ戸籍が無いんだ・・・そんな親も分からない子どもの正体などどう見極めろという話になる上、インターポールとしては組織の方が優先事項であって『江戸川コナン』の不審さは確かに見えてはいるが、それでも組織とはまだ完全に関係していると決まった訳じゃない小学生程度の子どもに組織の事やインターポールの事を漏らしたなら、後がどうなるかを考えるともしもの事にもなりかねん・・・故に組織を追う傍らでお前の事は要注意人物と言ったくらいで少しの間は収まっていた」
「少しの間はって・・・」
「お前が日本での組織に関係する事件のいくつかに関係・・・それもFBIとの繋がりが出来始めたと見えた時には、もう無視出来ん領域に来ていると判断出来たからだ。特にそこに転がっている赤井秀一との友好関係を築き出していると見れた段階にまで来た時は、もうただの子どもとして見ていい筈がないとな」
「あ、赤井さんの事も知ってたっていうのか・・・!?」
しかしと自身らの困惑についてを話していく斎藤なのだが、赤井の事を普通に知っていたといったような言葉に新一は何故と言わんばかりに驚くが・・・斎藤は禁煙パイポを手に持ち、やれやれと首を横に振る。
「赤井秀一に関しては一般社会ではともかくとしても、裏社会においてはその名に評判は知れ渡っている部類にある。特にあの組織について関係か知っている者達からしたなら、むしろ赤井秀一の事を知らない方がおかしいと言えるくらいにはな」
「ぁっ・・・!」
そのまま当然だと言わんばかりに知っている方が普通だと口にする斎藤に、新一も心当たりについてを思い出して小さな声を漏らす。






・・・新一が思い出したのは先程のジョディ達との話で出てきた水無との時の事だ。その時は意識のないフリをしていた水無を起こさせて赤井と共に話すことに成功したのだが、あの時は話を進める空気もあって何も気にしなかったが水無は普通に赤井の事を認識していたというのを思い出したのである。所属も違いろくに喋ったこともないであろう赤井の事をだ。






「まぁそこについてはさておき、赤井やFBIと近しく・・・それも今の保護者である毛利小五郎の元から離れ単独でいる形で何かの指示を受けて行動しての物ではないと見た俺達は、本格的にお前が誰なのかということについてを考察することにした。お前の正体が何者なのかとな・・・だが考察をしていく内にある行動が確認されたことにより、お前が工藤新一であるのではないかという推測が出来た」
「なっ・・・そ、それって何なんですか・・・!?」
「お前が火事で住む場所を無くした『沖矢昴』をこの工藤家に置くようにしたことだ」
「・・・え・・・?」
斎藤はその反応に構わず話を進めていくのだが、自身についての推測が出てきたタイミングについてに新一は心底から何故と言わんような呆けた声を漏らした。何で赤井をここに住まわせるのがその理由なのかと。
「・・・今のお前は工藤新一を名乗らず、『江戸川コナン』として活動しているだろう。遠い工藤の家の親戚の子だが親と一緒にいれないからと、毛利家に転がり込む形でだ。そして今のお前は小学校に通う小学生でしかない筈なのに・・・そんな親戚の子ども一人がこの人住む場所が無くなったから、この家に住まわせてほしい・・・などと言った所で自身らが今は定住してはいない上で息子も何処にいるのか分からないしいつ帰ってくるかも予想がつかないのに、可哀想という身の上話をされただけでいい大人が無条件で自身らの家を赤の他人になど、例え親戚からの願いとは言え普通の大人がどうぞと快く貸す・・・そう聞いてお前は当然だと胸を張って言えるか?今のお前達の関係についてを頭から除いた上で言うなら家を貸すのはアパートが焼けて家財も金もない苦学生であって初対面という、泥棒をする可能性が決してないとは言い切れない人物を物を盗まれてもいいし気にしないから親戚の小さな子どもに言われたし住まわせるのは当然だ・・・とな」
「っ!?」
だが斎藤から口にされた数々の言葉・・・それも途中に口にされた客観的に見てみろといったように付け加えられた中身に、新一は絶句せざるを得なかった。端から見たならいかに自身らの行動が異常に思えるのか・・・それらを聞かされた時、自分が怪しまずにいられる要素を探すのが難しいと言えるほどに。









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