揺れぬ正義を持つ狼の目 前編

「・・・さて、こうして赤井秀一は戦闘不能に出来た。次は君だが、下手に抵抗するのは止めておくんだな工藤新一。室内で使える武器は麻酔銃くらいしかないのは調べはついているが、俺を狙えば安室君がお前を押さえにかかり安室君を狙えば俺が押さえる事になる・・・まぁ万が一他の手があるか思い付いてこの場を切り抜けたとしても、その後がどうなるか・・・予想してみればいい」
「っ・・・!」
だが更に斎藤がニヒルに笑みながら向けた顔と声に、新一は追い込まれて顔をひきつらせるしかなかった・・・斎藤の言葉通り新一一人でこの状況を打開するには小学生低学年程度の体でしかないのに、青年であり立派に鍛えている二人の男相手に立ち向かって敵うはずなどないのは目に見えている。そしてかなり有り得ないがよしんば今をどうにか出来たとしても、その後に関してはどう考えた所で新一にいい方向に転がるなど・・・斎藤もそうだが、よく知らないその斎藤よりも今の安室との関係を考えれば想像が全くつかなかった為に。
「・・・さて、赤井の拘束は斎藤さんに任せるが・・・一応言わせてもらおうコナン君、いや新一君。すまないな、こんなことをして。しかし君と赤井達の事についてはもう放っておく訳にはいかないとなったから、斎藤さんと協力してこうすることになったんだ」
「な、何で・・・て言うか、俺は安室さんに俺が工藤新一だなんて言ったことはないはず・・・」
「そこはインターポールの調べからお前が工藤新一ではないかという推測が出てきた上で、公安に協力を頼んだ事からそうだと確信出来たからだ」
「斎藤さん・・・ていうか赤井さんっ・・・!」
そうした中で安室が新一に話し掛けるのだが何故言ってもいない自分の本名を知ってるのかと今更ながらに聞くが、斎藤が安室の横に禁煙用のパイポを取り出して咥えて歩きながら話してきたことに赤井に視線を向けるとどこから出したのかという縄で、両手と両足を縛られ床に放置されている様子に声を詰まらせた。
「・・・まぁいきなり何故インターポールが動き出したのかもそうだが、どうして自分の事を知ったのかという疑問があることだろうがまず一つ先に言わせてもらう・・・インターポールも最初からお前に注目していた訳じゃない。というよりインターポールもお前達が追っている組織についてを調べて潰そうと考えて動いていた中で、『江戸川コナン』という子どもの存在が出てきた事からだ」
「え・・・?」
「CIAもFBIも公安もそうだが、インターポールにも独自の情報網があるし捜査員は各国で活動している。その中でもお前達が追っている組織については目を向けている上で、誰が組織の中でも上の方にいるのかについてはある程度把握している・・・その中にはジンにウォッカもそうだが、テキーラにピスコといった面々もいた」
「なっ・・・!?」
構わず安室の隣に立った斎藤はそこで改めて何故こういったようなことをしたのかを『江戸川コナン』についてを知ったからと言うが、戸惑う中で続いて出てきたテキーラにピスコという名に新一は絶句してしまった・・・ジンにウォッカはまだ存命中ではあるが、後の二人の名は新一にとってはほぼ初対面であってその初対面の時に死んだ二人の名であったことに。
「言っただろう、独自の情報網があると。まぁ他の機関が得ていない情報を持ってはいても、こっちが持っていない情報もあるだろうからズルいであるといった言葉は聞かんがそんなことは問題じゃない・・・問題なのは、『江戸川コナン』が関わりだしてから妙な形になりだしたことだ」
「っ・・・!」
そんな驚きに斎藤は自身らの情報網だと言うが、自身らにとって重要なのはそこじゃなく『江戸川コナン』にあると告げたことに新一はそっと冷や汗を浮かべた。明らかに今までの流れから自分にとっていい事は起こらないと感じる流れに。









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