揺れぬ正義を持つ狼の目 前編

「・・・こういった公安とインターポールからの推測、そして俺達の事実を聞いていなかったFBIの上の方からの追求にジョディ達は答えを濁すことしか出来なかったそうだ。何せ事実を明らかにしてしまうということはボウヤに両親の事を明かしてしまうことにもなるが、楠田の事を言ってしまったとしても死体損壊に死亡の偽装を俺達が行ったことを認めることになるからな」
「でもそれは、必要な事だったから・・・!」
「必要な事だと判断したのはボウヤに俺もそうだし、水無もそうだ。だが必要な事だから組織の人間が自殺しましたから俺の死の偽装の為、その死体を使いました・・・などと正直に口にしたとしてそれが誰もが誰も、正しかったと言うと思うか?水無がキールでありCIAの一員であることをバラさないため、俺の死で奴らの死を欺くため・・・様々に理由は口に出来る上で敵の死体と言えど、俺達だけの独断で死体にそのような扱いをしたことをだ」
「っ・・・そ、それは・・・」
そういった両者に加えての周りの状況のまずさについてを話していく赤井に新一は正しいのは自分達だと言わんばかりに勢いよく返すが、すぐに返ってきた問い掛けの言葉に勢いを失って戸惑いに視線をさ迷わせた。いや、その表情からは血の気が引いたような様子すら伺えた。
「・・・分かったか、ボウヤ?俺達はあの時はこれでいいといった判断を下したが、あれは周りには何の相談もせず誰の許可も出されていない独断の行動だ。そしてボウヤはその片棒を担ぐどころか、発案者の一人だ。それを認めてしまったなら、ボウヤはFBIに所属していない事に加えてその体と組織との関係がある・・・公安とインターポールにその事実を知られたなら十中八九どころではなく、ボウヤはどちらかにその身柄を拘束されることになるだろう。まだ安室君がいるから公安はどうにかなるかと思っているかもしれんが、インターポールに関してはこちらはあまり向こうとは関係していないから何とも言えないからな」
「・・・だからその、ジョディ先生達は俺達の判断についても黙らざるを得なかったってことか・・・俺だけじゃなく、赤井さんのやったことを黙る為って意味も含めて・・・」
「そういうことになる」
赤井もその顔を見た上でだから言えない上で危険なのだとその旨までもまとめて告げると、新一も流石に自分も含めていかにまずい事になるのかに気付いて力なくうなだれるしかなかった。






・・・そもそも話に出てきた楠田という男の死体を使うという案についてだが、これは新一達が追い掛けている組織を壊滅させる為にCIAの人員でありスパイとして入り込んでいた水無という人物がスパイと怪しまれていたため、その疑惑を払拭すると共に自分達と協力してもらう為の人員となってもらうために出てきた案だ。赤井を殺せばスパイとは見なさないという、組織の人間から持ち掛けられた案を逆手に取るためだ。

その時にあったのがFBIが追い詰めた上で自殺された楠田の死体であったのだが・・・誰からの発案であったのかは最早問題ではなく、そうしてしまうことにしたことが問題となっていた。あくまでそうしたことは何人かだけ、それこそ名前が出た三人にこの場にいるジェイムズくらいしか知ってはいなかったのだ。誰かにその事実を知らせたら、特にジョディはかつての恋人関係という間柄であり口を滑らせるか態度で赤井が死んでいないのではないか・・・という懸念があったために。

故にこそその判断が今となって大きな枷になった上で、改めて今その事実を明らかにしたならどうなるか・・・それを危険性として新一は感じているのである。と言ってもそれが本来感じるべき物であるかどうかは別であるが・・・









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