揺れぬ正義を持つ狼の目 前編

・・・日本の江戸という時代の末期から、明治という新しい時代において自身の正義を貫いた狼のごとき男がいた。そんな狼のごとき男はその正義を抱いたまま死んでいった。その事に男は自身で満足しながら・・・しかし時を経て男は転生した。前世の記憶を持ちながらだ。そしてその男は新たな自身の正義を抱きながら動くことにしていく・・・文明が進み国と国を行き来することなど難しくもなくなった時代にて、世界を股にかけるようにしながら・・・


















「・・・ん?安室さん、あの人また来てるね」
「あぁ、あの人かい?少し話をしたんだけれど、どうやらちょっと前にこの辺りに引っ越してきたらしくてね。それで引っ越しを終えて来たここのコーヒーやハムサンドが気に入ったらしいんだ」
「ふ~ん・・・」
・・・喫茶店ポアロにて。ポアロに入ってきた江戸川コナン、本当の名は工藤新一・・・という小学生低学年くらいの見た目だけは子どもが、客の中に最近見るようになった細目の背の高い痩せたスーツ姿の男に気付き近くにいた店員である安室に声をかける。そんな安室の返答に注意深く視線を向ける新一だが、その男が新一に目を開けているかどうか判断がつきにくい視線を向けてきたことにハッとした。
「・・・どうしたのかな、ボク?おじさんに何か用かい?」
「え、えっと・・・最近ここによく来るから誰なのかなって・・・」
「そうか・・・」
「ちょ、どうしてそこで元に戻るの!?」
その男からの優しい問い掛けに新一は戸惑いながら答えるのだが、すぐに男が視線を元に戻したことにストップをかける。
「なんでも何も、おじさんは君からなんでそんなに注目されてるか分からないから質問しただけだからね。それとも君はおじさんから何か君の好きな娘の事だとか、今もおねしょをしているのかとか聞かれたいのかい?」
「なっ・・・そ、そんなこと聞かれたくないよ!」
「ならいいじゃないか。それにおじさんはそろそろ行くから君とのお話はこれまでだ・・・じゃあね、坊や」
「っ・・・」
その男は一応振り向いて答えるがその中身が意地の悪い物であることにたまらず声を上げた新一だったが、男は構わず笑みを浮かべて伝票を手に取り立ち上がって手を振り会計に向かったことに苦い顔を浮かべた。おちょくられた怒りを感じたのもあるが、ここで男を是が非でも止める理由がないというのもあった為に。






・・・そうして男が会計を済ませポアロから出ていったのを見て、席についていた新一は近付いてきた安室に話しかける。
「・・・ねぇ安室さん。あの人の名前って分からないの?」
「斎藤って言ってたよ。話を聞くと海外で商社マンとして活動していたけれど、しばらく仕事の都合から日本を拠点に動くともね」
「そうか・・・なぁ安室さん、それ本当なのか?」
「・・・少なくとも彼らの一員ではないとは言っておく。これに関しては僕がよく知っているからそれは確かだ」
「・・・そっか。勘繰りすぎたかな・・・」
そうして新一は安室から話を聞くのだが、彼らの一員ではないと聞いた途端に今までの疑る様子をすぐに変えて納得の様子を浮かべ考え込むように視線を背ける。安室の事は今となっては敵ではないと思っているからこそ、そしてその立場についてを知っているからこそその言葉に信用を置けるというよう。



・・・だが新一は視線を反らしたからこそ気付かなかった。安室の目がそっと哀れむような物を見る目で細められて、それを自身に向けていた一瞬のことに・・・









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