得られた平穏と望まぬ平穏の二つの平穏

「・・・ま、もういいか。今日書いてもらった紙でもう新一に高校にいる間に書いてもらわなきゃならない物はしばらく無いってことだし、何か言われてももう俺は新一の所に行かないどこっと。そして家に荷物を置いたらさっさと山に登ろ」
ただそんな考えを唐突に切り上げ、山岳はロードの速度を上げていく。早く役目から解放されたいと。






・・・元々山岳はそんなに人に対して厳しい人物ではない。だが新一に対しては色々感じるところもあった上で、坂道にインターハイでギリギリ後一歩といった所で負けて然程時間が空いていなかった事があった為、表面上はともかく山岳の気持ちはまだ敗戦のショックから立ち直りきれていなかった。

そして色々書類を書いている間に世間話をしていた山岳だが、新一はそんな心中など察しないままにインターハイ二位おめでとうと言ったことが山岳からしたら嫌な気分にさせられたのだ。悪意がないのも誉めてくれているのも分かるが、山岳からしたならあの敗戦はかなり引きずっていた上に言ってしまえば新一からしたなら部活の試合で負けたくらいだろ・・・みたいな気持ちが強いと感じてしまったのだ。本気で悔しがる必要なんて全国二位になれたんだから全くないだろうとばかりの気持ちを。

故に表情としては緩い笑顔のまま応対した山岳だが、そんな新一に対して嫌な気持ちを抱いてしまっていたのだ。だから山岳としてはらしくもなく当て付けのようなこととして、両親の事を持ち出してせめてもの意趣返しをしてアパートを出たのだ。

・・・確かに新一は探偵を目指そうとしているだけあって頭もいいし、色々と勘の鋭さに物事を察する力もすごいとは山岳も知っている。しかしそんな要素があっても身内相手には遠慮がないというか、こういうことを言ってもいいか悪いかの配慮が足りないこともまた山岳は知っていた。身内だからこれくらいは言ってもいいだろうと、勝手に思い込む形でである。

だが高校に入ってからは山岳も以前の山岳とは違う成長をしたし、何より坂道にインターハイで敗北したという経験が新一の知る山岳とは違う山岳を生み出した・・・負けて悔しいと思う気持ちに苦しむ山岳をだ。だからこそ今までの事も加わってだめ押しとなり、もう新一に関わりたくないという気持ちを固めさせてしまった。






・・・新一はまた新たな自身を拒絶する者を生み出し、それを知らないままに生きることになるのである・・・自身の行動による自業自得の結果ということを・・・



END



(こんな感じです。他の弱ペダメンバーはどうかはともかく、真波はかなりの可能性で兄弟になっても新一とはあらゆる意味で合わないと思います。そして小説の中身の評価に関してですが、新一の書く小説ってこのオマケで言ったことにプラスして探偵がカッコいいでハッピーエンドみたいな展開がデフォルトになるかと思いましたので、一部の面々からの評価は良くないといったようになったと思ってください)









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