得られた平穏と望まぬ平穏の二つの平穏

「ただ何か問題が起きなければいいんだけどね~・・・新開さんの感じだと多分生活が苦しくならないようには稼げるだろうけど、絶対にうまく行き続けるとも限らないんだし」
そんな時にふと山岳は自身の先輩についてを思い出しつつ、小説家としてしくじらなければいいなとぼんやり思う。






・・・話は大きく変わるが、山岳は新一の小説についてを読んだことなど両親が買ってきた本を1ページ程度読んだくらいで、急激に眠くなって途中で寝てそれで終わりにした。この辺りは本を読むのもそうだが学校の授業を受けても生きる実感などないからと、度々授業を平気でサボってロードに乗りに行く山岳からしたら活字を目で追っていくなど退屈極まりないのだ。

故に新一の本を読むことなどそれっきりなかった山岳は日々過ごしていくのだが、とある日に部活の先輩に新開という推理小説を読むのが好きな人物がいるが、その人物が練習前に新一の本を読んでいた上に時間も多少あったために雑談がてら聞いてみたのだ。「それ、面白いですか?」と。

その言葉に新開は面白いよという言葉から返していくのだが、けど最近は他の人も言っていたけれど物の評価を出せるサイトで評価を下す際に微妙に出てきたのがトリックや伏線の入れ方にストーリーはいいけれど、なんというか人物の書き方だったり事件の動機が似たり寄ったりな感じに思える・・・という意見が返ってきた。

・・・これは前世の事件からネタだったり登場人物を引っ張りあげている新一だが、同様にその引っ張りあげている瞬間にやたらとポエミーだったり自分に酔っているかのような人物像までもを引っ張りあげているからだ。故に新開もそうだがレビューを書いている者達もそこを気にしているのである・・・『工藤優作』の作品のキャラには犯人に心底から絶望したといったようなどん底感だったりがなく、他の登場人物もやたらともって回ったような芝居がかった台詞回しが多くて今まで出てきた作品に全て共通している・・・要はどこか軽さを感じてしまうのだ、と。

ただそれでもそういった部分に目をつぶるか特徴だと思えば面白いことには違いないしレビューを書いた人もそう評価を下してると新開は返すのだが、山岳はそれらにあぁ確かに・・・というように納得したのだ。昔から新一はそういった所があったし、探偵になるというのをそれこそ話の中で出てくるヒーローのような物のように思っている節を大いに感じると。

そんな話を聞いた後に山岳は実際にレビューについてを調べたのだが、確かに評価自体は数だけ見れば高評価は多い上にドラマ化も決まった原作もあったりしてはいる・・・ただコアぶる人物も中にはいたりはするが、評価を下げている者の意見を重くなる眼を我慢しながら開いていく中でそういった軽さがいただけないという意見は確かに少数ながらも存在していた。

その事にどうなのかなと山岳は思いはしたし、新一に伝えようかなと考えもした・・・だがそれはしないでいいやとあっさり山岳はその考えを捨てた。何故なら新一が自分は小説家ではなく探偵になりたいというのは以前から聞いていたし、あくまで金を貯めるための手段だというように言っていたからだ。

だから一々言わなくてもいいかと考えたのだが、そもそも探偵なんて職が安定した稼ぎを得られるかも分からない上に小説を書くのを出版社から求められて止めることが出来るのかもそうであるし・・・何より新一が言ってどうにかなるというか、改善をするように思えなかったのである。今までこれで良かったんだからこれでいいだろう、と。

だから山岳は何も言わないようにしたのだ。後は何もなければいいと思う形で。









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