得られた平穏と望まぬ平穏の二つの平穏

「・・・ただいま~」
「おう、お帰り。汗かいただろ?風呂に入ってこいよ。飯の準備もそれくらいに終わるからよ」
「お父さんがご飯作ったの?」
「あぁ、こうして家に帰ってきたんだからたまにはって思ってな」
「うわぁ、お父さんのご飯美味しいから楽しみだよ。じゃあお風呂に向かうね」
・・・それで少し時間が進んで夕方という時間になり、小野田家の玄関にて。
自転車競技部のジャージに身を包みながら家に入ってきた坂道にエプロンを着けた小五郎は奥から笑顔で出迎え、ご飯を作ってるとの言葉に同じように笑顔になりながら靴を脱ぎ家に入っていく。






「・・・飯、食いに行くか・・・今日作る気起きねぇし・・・」
・・・場所は変わり、新一の住むアパート。
夕方になって腹も空いたと自分が書いてない推理小説を読んでいた新一はのそのそと立ち上がり外へと向かうのだが・・・そもそも新一がこういった生活を始めてから、自分でご飯を作る事など一週間に一度あればいいくらいだった。精々買ってきたパンを朝にトースターで焼くくらいだがそんなものを料理と呼ぶわけもないし、米を炊くのも炊飯器を洗うのがめんどくさいという理由であまりやりたくないと思っている・・・故に大抵食事は外食で済ませているが、そもそも新一は料理をすること自体好きではなかった。前世でも家族の為にご飯を作ったことなどほとんど無かったし、味覚は鋭くはあっても自分はそこまで食にこだわるつもりもないし蘭が作ってくれるのだからと思い、自分は探偵として謎に向き合えばいいのだと考えるような形で・・・


















・・・平穏。それは大抵の者にとっては望ましい物である。しかしそこに馴染めない者は悲しいことに存在する上、そうだと自覚することも出来ない者も存在する。そして失って初めて気付くものもあるが、手に入れて初めて気付くものもある。

一人は平穏を手に入れて安堵を得た。一人は平穏を手に入れたというより押し込められたとばかりの状態となり、安堵とは程遠い陰鬱とした状態に陥ってしまった。

だがこれは一つの結果に過ぎない。波乱に満ちた環境から、平穏という環境に入った二人の人物がこうして暮らしているというだけの結果に・・・



END









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