得られた平穏と望まぬ平穏の二つの平穏

「・・・ま、いいや。もう用事は済んだからもらうものもらって俺は帰るけど、高校卒業したら多分実家に帰ってくることなんて今以上に無くなるんだろうから、正月くらい帰ってきたら?こう聞いて新一がどうするかとか分からないけどさ」
「・・・そうするようにはしようとは思う・・・」
「そう。んじゃね~、新一」
山岳はそんな様子に構わず一度くらい帰ればと緩く言うが、新一は明らかに乗り気じゃないと分かるように答えるがそこには突っ込まず山岳はさっと一声残して手を振りアパートの外へと向かう。
「・・・言いたいことは分かる・・・でももうキツいんだよ・・・」
・・・それで山岳が部屋から出た後、新一はただ辛そうに漏らした。帰りたくないという気持ちがあるのはどうしようもないことだというよう。






・・・そもそもからして、新一は自分が大人どころか老人まで生きてきた経験があってその経験から早く自立したいと思っていた。誰かの世話になるのはむず痒いという気持ちから。そしてそういったこともあって高校からの一人暮らしをしたいと無理矢理押し進めたのだが、それは今生の両親から考えなしというわけにではなく純粋に心配からの反対をされたのである。

確かにまだ成人もしていない子どもがお金があるからと、一人暮らしを敢行しようとすることがどれだけ危険だったり心配なのかとは新一も分かりはする。しかし自分なら大丈夫だしそうしたいという気持ちが強かった上に、新一にとって自覚のない枷となったのは前世での経験・・・家から出るからお金は振り込むので一人で暮らすようにと、自分なら大丈夫と見込まれて一人で高校時代を過ごしてきたという経験があったからである。

この事から新一は自覚はないが誰かから干渉を受けたくないし自分は一人で大丈夫だという自信が強くなり、今生では流石に家庭環境の違いから金の無心は出来ない故に自分で稼ぐということはする必要はあるが・・・それを前世のことも含めて馬鹿正直に全部言えるわけも無かったから、新一は両親と長い時間強引に話し合った上で今の状況を勝ち取ったのである。

ただそんな風に話し合いをしたのだが、今生の両親は山岳が小さい頃体を弱くしていたということからある程度の元気から来る問題行動・・・山岳で言うなら授業がつまらないからロードに乗りに行くといったサボりのような物にはおおらかな面は持ちつつ、同時にそれを超えるような行動に関しては心配するような面も持ち合わせていた。こればかりは親としての気持ちがある故の物であり、だからこそ新一の事を心配したりすると共に大きく見放しもしないのである。

しかしそんな親としての気持ちが却って新一からすればうざったいとは言わずとも、放っておいてほしいだったり信頼してほしいといった気持ちに繋がると共に、居心地の悪さになるから真波の実家に帰ることを極力避けるようになったのである。人柄が悪い両親達ではないのは百も承知だし、実際に帰ってみれば温かく迎え入れてはくれる・・・だが一人で過ごしたいという気持ちから、新一は実家に帰るのを避けているのである。

ただそんな行動を取って実家に寄り付かないが故にしわ寄せとして、手続き上本人に書いてもらわなければならない書類だったりを郵送なり誰かを経由して運ばなければならないのであるが、そういった時は大抵山岳が予定についてを確認された上で新一の元に送り出されるのである。









.
11/21ページ
スキ