得られた平穏と望まぬ平穏の二つの平穏
「・・・お父さんはどれくらいまで休みがあるの?」
「まぁ一週間って所だが、どうした?なんかあるのか?」
「えへへ、どうせだからお父さんと一緒に自転車で走りたいなって思ったんだ。折角お父さんが帰ってきたんだからって思ったんだけど・・・駄目かな?」
「いや、いいぞ。つっても俺は自転車乗ってないから、今なら坂道の方が早いのは目に見えてるけどいいか?」
「うん、大丈夫だよ!久しぶりにお父さんと一緒の時間を過ごしたいからゆっくり走るから!」
「っ!・・・よし、なら明日は一緒にサイクリングだ!」
・・・そうして食事も終わり、居間で男二人でゆっくり座って過ごす中で坂道から向けられてきた声に小五郎は答えるのだが、その笑顔からの言葉につられて笑顔を浮かべて返した。坂道との時間を目一杯楽しんで過ごすという気持ちを盛大に含ませて。
・・・娘達に対して仮面を被ったまま過ごしてきた小五郎は、予想が当たったというようになりながらも娘達が結婚するからと挨拶に来た時には予想はしていたからいいと、本気なのかを確認した後にそう言って結婚することを承諾した。
それで結婚届けを出して結婚式も挙げ、娘が義理の息子と暮らすという段になって送り出した後・・・小五郎は娘が結婚したことに残念がるより、一緒に住むことが無くなったことを心底から喜んだ。もう普段の生活で顔を合わせる必要も演技もいらないし、もう一々心をざわつかせられる事も格段に減るということに。
それからは時折年末年始であったり何らかのイベントであったりと集まることが普通は求められる時であっても可能な限りは仕事を入れる事で回避し、孫が出来たなんて言われてもその孫との時間も取ることはほとんど選ばなかった・・・これに関しては孫が可愛くなかった訳ではないが、娘達との関わりがまた深くなることを避けるためだ。
故に子どもを預かってほしいと言われた時には自分一人じゃ手が回らないだとか仕事があるからと言って逃げを取っていくのだが、その頃にはもう小五郎にはかつての名探偵と呼ばされるようになった頃の依頼は入ってこずに普通の探偵が行うような依頼がチラホラと来るくらいで、そんな依頼の量についてを知っていた娘からチクチク言われることもあったのだが・・・そこはもう完全にちゃらんぽらんなダメ親父というイメージを植え付けていったこともあって、娘も次第に小五郎から距離を取っていった。もうこんなお父さん知らないし、子どもにも関わらせないと言われる形でである。
・・・その反応に関して正直苛立たなかった訳ではない小五郎だが、もう自分に深く関わってこないならそれでいいという考えの方が強く大して気にすることなく過ごしていった上で・・・六十になるまで頑張った小五郎は探偵を潔く辞めると共に、地道にお金を貯めてきた上で探偵事務所を片付けた後の場所をテナントとして貸し出す手続きを取った後は基本的にその上の居住区に住む形で過ごすだけに留め・・・最後はそんな一人暮らしを続ける中で具合が悪くなった事から施設暮らしをすることにし、生涯を終えることになった。一応離婚はせずにはいた妻であった英理だけには自身の最期についてを伝える形にし、もう葬式も何もせずにひっそりと火葬して骨にするだけで終わらせてくれと望んでだ。
英理はそんな小五郎の最期の頼みを了承した・・・この辺りは実は英理はある程度ではあるが、娘達に関する気持ちについてをベッドに寝てる小五郎から聞かされたが故の事である。葬式をしないことに関してを拒否してきた英理に対し、死ぬ直前だからと今まで秘していた気持ちをぶちまけたが故にだ。
その気持ちを聞いた英理は絶句したが、小五郎には本当に娘達に対する気持ちがもうないということも理解した為にそういった密葬の形を取って火葬するに留めたのだ。英理自身も小五郎の気持ちを汲んで、小五郎が死んだ時のことを伝えず何故葬式をしなかったのかということを話すことなどせず・・・
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「まぁ一週間って所だが、どうした?なんかあるのか?」
「えへへ、どうせだからお父さんと一緒に自転車で走りたいなって思ったんだ。折角お父さんが帰ってきたんだからって思ったんだけど・・・駄目かな?」
「いや、いいぞ。つっても俺は自転車乗ってないから、今なら坂道の方が早いのは目に見えてるけどいいか?」
「うん、大丈夫だよ!久しぶりにお父さんと一緒の時間を過ごしたいからゆっくり走るから!」
「っ!・・・よし、なら明日は一緒にサイクリングだ!」
・・・そうして食事も終わり、居間で男二人でゆっくり座って過ごす中で坂道から向けられてきた声に小五郎は答えるのだが、その笑顔からの言葉につられて笑顔を浮かべて返した。坂道との時間を目一杯楽しんで過ごすという気持ちを盛大に含ませて。
・・・娘達に対して仮面を被ったまま過ごしてきた小五郎は、予想が当たったというようになりながらも娘達が結婚するからと挨拶に来た時には予想はしていたからいいと、本気なのかを確認した後にそう言って結婚することを承諾した。
それで結婚届けを出して結婚式も挙げ、娘が義理の息子と暮らすという段になって送り出した後・・・小五郎は娘が結婚したことに残念がるより、一緒に住むことが無くなったことを心底から喜んだ。もう普段の生活で顔を合わせる必要も演技もいらないし、もう一々心をざわつかせられる事も格段に減るということに。
それからは時折年末年始であったり何らかのイベントであったりと集まることが普通は求められる時であっても可能な限りは仕事を入れる事で回避し、孫が出来たなんて言われてもその孫との時間も取ることはほとんど選ばなかった・・・これに関しては孫が可愛くなかった訳ではないが、娘達との関わりがまた深くなることを避けるためだ。
故に子どもを預かってほしいと言われた時には自分一人じゃ手が回らないだとか仕事があるからと言って逃げを取っていくのだが、その頃にはもう小五郎にはかつての名探偵と呼ばされるようになった頃の依頼は入ってこずに普通の探偵が行うような依頼がチラホラと来るくらいで、そんな依頼の量についてを知っていた娘からチクチク言われることもあったのだが・・・そこはもう完全にちゃらんぽらんなダメ親父というイメージを植え付けていったこともあって、娘も次第に小五郎から距離を取っていった。もうこんなお父さん知らないし、子どもにも関わらせないと言われる形でである。
・・・その反応に関して正直苛立たなかった訳ではない小五郎だが、もう自分に深く関わってこないならそれでいいという考えの方が強く大して気にすることなく過ごしていった上で・・・六十になるまで頑張った小五郎は探偵を潔く辞めると共に、地道にお金を貯めてきた上で探偵事務所を片付けた後の場所をテナントとして貸し出す手続きを取った後は基本的にその上の居住区に住む形で過ごすだけに留め・・・最後はそんな一人暮らしを続ける中で具合が悪くなった事から施設暮らしをすることにし、生涯を終えることになった。一応離婚はせずにはいた妻であった英理だけには自身の最期についてを伝える形にし、もう葬式も何もせずにひっそりと火葬して骨にするだけで終わらせてくれと望んでだ。
英理はそんな小五郎の最期の頼みを了承した・・・この辺りは実は英理はある程度ではあるが、娘達に関する気持ちについてをベッドに寝てる小五郎から聞かされたが故の事である。葬式をしないことに関してを拒否してきた英理に対し、死ぬ直前だからと今まで秘していた気持ちをぶちまけたが故にだ。
その気持ちを聞いた英理は絶句したが、小五郎には本当に娘達に対する気持ちがもうないということも理解した為にそういった密葬の形を取って火葬するに留めたのだ。英理自身も小五郎の気持ちを汲んで、小五郎が死んだ時のことを伝えず何故葬式をしなかったのかということを話すことなどせず・・・
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