自らの想う物と相手の考えることの隔たり

「そうか・・・ならもう後は解散って言いてー所だけど、俺から最後に新一達や蘭に言わせてもらいたいことがある。それを聞いてくれ」
エドはその言葉を受けつつもまだ最後に言いたいことがあると切り出し、四人に冷めた瞳を向ける。
「・・・昔聞いた言葉に錬金術の基本は等価交換って言うのがあった。それは言うなら水を同じ量の水分のある別の物に変えることは出来ても、明らかにそれ以上の質量を持っていたり別の物質には変えることの出来ない物だって話だけど・・・人と人の関係は等価の交換と言うか、気持ちに感情に人格だったりと見合わせて構築される物だと俺は思ってる。大人がまだ言葉も喋れないような赤ん坊に対して大人かそれ以上に言葉を巧みに操ることを望んで、それが出来ないからブチ切れるなんてのはとても等価交換なんて言えるもんじゃねぇ・・・だから人と人の関係においちゃ相手がどんな人物なのかとか色々と見た上でどう接するかを決めていくのが対人関係だと俺は思っているが、あんたらがやったことは何だ?おっちゃんを都合よく利用しようとして言わなくていいから黙っていようって笑いあって、それで平然と進めようとして・・・それを知ったからおっちゃんは今のような形で怒ることになった。ただあんたらは俺が影で動いてたからとかって言いてーかもしんねーけど、あんたが自分達がこうしてーってことの為におっちゃんを利用しようって事には変わりは無い上で、それを聞いたおっちゃんに金でどうかって押し通そうとして来た・・・それは言ってみりゃ誠意って対価を払うどころか、勝手に利用するだけして何にも払わねーで済ませるなんていう不誠実極まりない行動だって事だ」
「「「「っ!!」」」」
・・・そうして自身の前世に知った錬金術の事も交えていかに四人が小五郎に対し、誠意が無かったのか・・・エドが口にしたそれらに、四人は強い衝撃を受けるしかなかった。実際に事実を口にされたのもあるが、エドの言葉が単なる絵空事と否定出来ない力と実感がこもっていたこともあり。






・・・錬金術の基本は等価交換。これは前世において錬金術に関わる中での基本として知った言葉であり、それは後のエド達の考えの基本となった言葉でもある。そこは人間関係においてもだ。

ただ何故人間関係にまでという点になるのかについてだが、錬金術士としての性もあったがやはりエドが基本的に善人であったことが大きかった。恩を受ければ恩で返すのは当然と、失われた筈の貴重な資料を再現して見せたとある女性に普通なら渡せない筈の大金をポンと引き渡すくらいはする形でだ。

しかしそれもあくまでその女性が親の為にお金を必要としていたという経緯もあってそれだけのお金を渡したのだが、人間関係の全てをお金だとか物質的な対価を払って全て解決・・・なんてことはエドはしなかった。むしろ錬金術士を辞めてからは一層人との付き合い方に関してを精神的な物として重要視していた。

実際に四人にも言ったが、自分という大人がこう思ってるんだから子どもはそれに従えというような考えは、エドは子どもを持って育ててきたことでやってはいけないことだと考えていた。むしろ両親がいない幼少に少年期を過ごして来たことで、親となったからには子どもと正面から向かい合い時間を使える時は使ってきた。そしてそれは自分だけでなく嫁となった幼馴染みに弟夫婦だとか、近隣に住む人々の助けを受けたり逆に困っている誰かがいたなら自分が助けに行ったりもする形でだ。

そんな人と人との付き合い、更に言うなら気持ちに関してはエドもどれくらい気持ちを送ったり返したりすれば等価に至るのかなど分かるものではないと思っている。故にそこは己の中にある天秤にかける形で自分の中で見合う対価を払う物だと思っているのだが・・・新一達の行動はそれこそエドから見たなら対価を払うどころか、むしろ一方的に奪うだけ奪って何にも返そうとしない略奪に等しい物にしか思えなかったからそう言ったのだ。済まないといったように言いつつ金銭で手を打とうとした上で、尚且つ新一の事を受け入れるように進めようとしたことも含めてである。









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