自らの想う物と相手の考えることの隔たり

「・・・正直さ、俺としちゃここまでになるとは思っちゃいなかったんだ」
そんな時にポツリと冷めたような瞳を浮かばせて工藤家三人と蘭を見据えたエドが漏らした言葉が辺りに響く。
「・・・俺としちゃ新一の事についてをちゃんとした形で話し合ってほしいと思ってたんだ。新一もそうだし優作さん達や蘭にも新一がどれだけ危険なことに首を突っ込むのかだとか、それで周りを巻き込まないようにだとかって話し合えるかとかな・・・けどそんな話し合いをちゃんとしてくれるかって思ったら、出てきたのはおっちゃんを利用しようって言葉でそれでいて平気にこれで大丈夫だって危険性とか人を巻き込んでるって事を全く考えちゃいねぇ・・・極めてあんたらにとってだけ都合が良くて、新一に至っちゃお前自身がこうしたいってワガママを引くことなく押し通す以外しようとしなかったってことばかりで・・・そうして終いには蘭がおっちゃんを利用すればいいって、実の父親を軽視してそれにあんたらが乗って笑いあってる・・・こんな風になることなんかおっちゃんもだろうけど、俺も望んでた訳じゃねぇんだよ・・・新一の事をどうするかって話し合いがこんな形になることなんてな・・・」
「「「っ!」」」
・・・そしてエドから漏れた心底から脱力した上での失望の言葉に、工藤家三人はただただ息を呑むしかなかった。いかにエドからしたなら四人がどれだけ愚かな事をしたと思っているのかと、その想いや実感がこもった言葉と表情でいやが上にでも感じてしまったが為に。






・・・エドが新一の事を嫌いだと思った理由に関してであるが、実は人の命に対してや推理を行うことに対してだけではない。それは昔の自分と全く同じではないにしても、質としてはそこまで遠くないと思える出来事が起きた上でそんな出来事に対しての姿勢に関して同族嫌悪の気持ちがあるからだ。

ならその出来事とは何かと言うと詳細を語ると長くなるので端的に言うなら、エドとその弟が幼心から失った物を取り戻そうとしてやったことにより、そこで更に失われた物だけでもせめて取り戻そうとしたということだ。

これだけ聞くなら間違ってはいないことなんじゃないかと思われるが、最初に失われた物を取り戻そうとした物とは病気で失われた母であり・・・その母を錬金術を持って生き返らせようとするという、錬金術士にとって最大のタブーと言われる事をやってしまったのだ。

そしてその結果としてエドは足を失い、弟は全身と共に魂を持っていかれたがエドが何とかと動いた為に右腕を代償にして弟の魂だけは何とか近くにあった鎧に持ってきて定着させることで、弟の死を避けることが出来たのだ。

そんな出来事からエドと弟の周りでは様々な事が起きた・・・人体錬成が何故タブーと言われていたのかの理由を身を持って知り茫然自失と言った状態になり、自身の保護者や家族のような存在達と話し合ったり、幼いながらも錬金術士として優秀ということからスカウトに来た軍の人間達とぶつかったりとだ。

そんなやり取りを経たエドは様々に考えた上で弟共々元の体に戻るために動いていったのだが、そこから先の話はここでは重要ではない・・・重要なのはエド達の状況と新一の状況は似通った部分が存在しているというところだ。









.
17/27ページ
スキ