自らの想う物と相手の考えることの隔たり

「・・・なぁ、おっちゃん。怒ってるまんまでいいから答えてほしいんだけど、新一達に協力したいなんて気持ちは見た感じねぇよな?」
「当たり前だ!何で俺が新一の操り人形にならなきゃなんねーんだよ!」
「お父さん・・・そんな・・・」
「俺は頼りにならねぇんだろ!?だったら頼りになる奴を見付けるなりなんなり勝手にすりゃいいじゃねーか!俺を勝手に利用するって決めたこいつらの言いなりになって動くなんざ真っ平ゴメンだ!」
「っ・・・!」
それでエドは頭を上げ慎重に質問を向けると怒声で小五郎は返していき、蘭のか細い声にも全く同じ勢いのまま拒絶を返してたまらず辛そうな顔を浮かべる。
「・・・だったら金を出そう。それで手を打ってくれないか?」
「は・・・?」
「ちょ、ちょっと貴方本気なの・・・?」
「あぁ、本気だ」
しかしそこで優作が口にした金との言葉に新一もそうだが有希子も唖然としたように問い掛けるが、本気と頷き返す。
「・・・確かに何も言わずに事を済ませようとしたのは良くなかったと思う・・・だがそれなら依頼としてお金を出すから、それで新一のことを受け入れてはくれないかと「あんた馬鹿か!?」・・・エド君?」
そうしてならばと考えを変えたことについてを口にして頼むことを口にしようとした優作だが、今度はエドが怒りの表情を浮かべて怒声を上げたことにキョトンとした様子になるが・・・エドは勢いよく優作の前に来て、思い切り胸ぐらを掴んだ。
「あんた分かってんのか!?あんたが言ってんのはさもおっちゃんの怒りを理解したみたいな感じに言ったけど、金を出すからそれでみたいな言い方はおっちゃんのことを考えたもんじゃねぇ!新一が譲らねぇのは分かってるっつっても、新一の方を優先したいからおっちゃんにそれに従ってくれっつってるもんなんだぞ!?」
「っ・・・そ、それは・・・」
「それにあんたは今おっちゃんに謝るとかそう言ったことなんか一言もなく、金のことを切り出した!それはつまりどれだけおっちゃんに対して不誠実でいて、新一の事を優先してるのかって事になるんだよ!それも新一を諦めさせるだとか別の手段を取るようにだとかそんなことを一切考えた様子もなく、ただ金は出すけどその他諸々はおっちゃんに全部やらせるって感じにだ!それで本当にあんたがおっちゃんに対して悪いって思ってるかだとかってのもそうだけど、新一に対して親としての責任を果たしてるかだとかそんなこと言えんのか!?あぁ!?」
「っ・・・!?」
・・・そこから怒りのままに捲し立てつつも理屈的なエドの言葉の並べ立てに、普段は余裕の表情を浮かばせる優作もたまらずに苦い顔を浮かべるしかなかった。勢いと怒りに呑まれる部分もあるが、何よりエドに言われたことの中身を否定出来る材料が・・・優作に見当たらなかったが為だ。






・・・優作に対して様々に厳しい事を言ったエドだが、こう言ったことを言ったのは以前の自分の事を踏まえてだ。

以前のエドは弟も含めてとある長い旅に出ることにした。その旅については最初は母親が死別して父親が行方知れずであった為に幼馴染みとその祖母と長い間話し合いをした上で、意志は変わらないと示して旅をすることになった。

それでその長い旅も終わり故郷に戻り幼馴染みと結婚して自身も子どもが生まれて親となった折りには、エドも色々と考えさせられたものだった。親となるというのはこういうものかと共に、自分の父親については理由があったから仕方無かったとは思ってはいるが、特別な理由がない自分は出来る限りは親としての務めを近くにいて子ども達の為にも果たそうと。

勿論それらが簡単でいて全て順調だった訳ではないと今でもエドは思い出されるが、それでも成長していった子ども達が立派に成長してくれた事は今でも喜ばしかったことは覚えている。自分一人の手柄だ等と思っていないが、それでも親としてやれることはやれたと思う形でだ。

・・・しかしこうして別世界に生まれ変わり、工藤家と交流していく内に新一以上に優作と有希子夫妻に関して以前から思うようになっていったのだ。この二人は端から見れば人間としては成功を納めているのかもしれないが、自分は人としても親としても好きになれないというように・・・









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