自らの想う物と相手の考えることの隔たり

「ちょっと待った・・・それがあんたらからして最適だみたいに話の流れから考えたのは、まぁ分かった。ただ新一・・・お前分かってんのか?蘭が言いだしたって事もそうだけど、お前が言ったことってのはおっちゃんを利用して手駒のように使おうとしてるってことだぞ。それも何にも本人には知らせず、自分の都合のいいようにだ。そんなことをマジでお前がこうしたいからって気持ちで押し通そうってのか・・・?」
そうしてエドはそこから阿笠の前に出て表情を改め、真剣に問い掛けを新一に向ける。四人で話したことの意味を改めて口にした上で、そうするのかと。
「・・・確かにエドの言いたいことは分かる。分かる、けど・・・おっちゃんに協力をしてもらうようにって考えても、そうしてもらっても大丈夫だって思えないんだよ・・・どうしてもヘマをしそうっていう気がしてよ・・・だからおっちゃんには悪いって思うけど、俺があいつらを追って捕まえるためにはこれが一番手っ取り早いと思うからおっちゃんの所に行こうって思った」
「・・・新一の考えはそれがいいって思ってるってことか・・・じゃあ優作さん達は?」
新一はその問いに天秤はやはり自分の気持ちを優先する方に傾くと強く言い切り、エドは確認が取れた所で今度は親二人にどうなのかと問い掛ける。
「・・・私は新ちゃんの意志が強いってことは知ってるし、新ちゃんには元に戻ってもらいたいから今のままじゃどうしようもないから、そうした方がいいって思ったわ・・・」
「・・・私もだ。確かにエド君の言った通り私には色んなツテはあるが、それを使ってというのは新一が望まないだろう。となれば私に出来ることはその後押しくらいだが、隣の家で今の体の新一と一緒に新一が表向きは何処かに行ったまま行方知れずに暮らすことは不自然極まりない・・・そう考えれば毛利さんには迷惑をかける事になるが、そうした方が一番収まりがいいと思った」
「・・・あんたまでそんなことを言うのかよ・・・」
だが二人が口にした答えは思う所はあれどもその通りがいいだろうとの答えに、エドはとうとうとばかりにガックリと頭を下げて脱力してしまった。三人の意見が図らずもエドにとって悪い意味で揃ってしまったことに。
「新一も二人も賛成したし、これで決まりね!あっ、でもしばらく一緒に住むからと言って着替えとか覗いたりしたら駄目よ新一!」
「覗かねーよ!」
「あら新ちゃん、それは蘭ちゃんに失礼よ。そんな風に女の子の事を興味ないみたいに言っちゃ。そうよね、貴方?」
「はは、私からは何も言えないな」
そんな様子に決まりだと蘭が一気に明るく冗談めかせたような表情と会話を向けてきて、工藤一家三人もまた朗らかな様子で返していく・・・これで完全に話は丸く収まったし、これでいいといったような雰囲気で。
「・・・エド・・・」
「・・・分かってる・・・ゴメン、来てくれおっちゃん・・・」
「・・・え?」
だがそんな空気の中で阿笠がエドに心配げに声をかけてエドがたまらず頭に手を当てながら漏らした声に、新一達の中から誰とも知れない戸惑いの声が漏れた。
‘ガチャッ!ドタドタドタ!’
「・・・えっ!?お、お父さん!?どうしてここに!?」
・・・だがそこからすぐに扉を開けて慌ただしい音の後、その場に現れたのは蘭の父親である小五郎なのだが・・・その表情が鬼気迫る物であったことも相まって、蘭は大きく困惑せざるを得なかった。
「・・・わりぃな、おっちゃん・・・こんな風になっちまって・・・」
「いや、おめぇのせいじゃねぇよ・・・こうなっちまったのはよ・・・!」
「お、おいどういうことだよエドにおっちゃん・・・一体何が・・・!」
「・・・簡単に言ったら今の話し合いについてを外で聞いてもらってたんだよ。ここに仕掛けといたスピーカーを今おっちゃんが耳に着けてるイヤホンに聞こえるようにして、そこから流れてくる会話を聞いてもらう形でな」
「「「「っ!?」」」」
そんな様子にエドが謝り小五郎が首を振りつつも憤懣に満ちた表情を浮かべていた為にたまらず新一がどういうことかを聞くが、エドから返ってきた答えに工藤一家三人に蘭が驚愕した・・・確かに今も小五郎は左耳にイヤホンをしていて、これまでの会話を聞かせていたということに。









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