自らの想う物と相手の考えることの隔たり

「・・・蘭、お前それ本気で言ってるのか?おっちゃんに何も言わずとか頑張ってもらおうとかよ・・・」
ただエドもその発言についてを再度確認するよう、静かな口調と声ながらも強く真剣に問い掛ける。本気で言ったことなのかと、自分もそうだが周りにも聞かせるようにと。
「そうだけど・・・だって新一が引かないって言ってる時ってどんなことをしてでもそうしようとするのは私も知ってるけど、だからってそれで新一がしばらく離れるなんてって思ったから・・・」
「そこまではまだいいって言ってはおく・・・ただ何でおっちゃんには何も言わないってなるんだよ?」
「だってお父さん頼りないしだらしないんだもん。あんなお父さんに今の話をしたってちゃんと秘密を守ってくれるかどうかなんて信用出来ないし、だったら最初から何も言わないようにしてお父さんにその人達の事を探してもらった方が新一の為になるからよ」
「っ・・・!」
蘭はそんな変化に気付かずこうするのが当然だし最良だと言わんばかりに指を頬辺りに当てながら話を進めていくが、その中身にエドが怒りに我慢するように歯を噛み締めそれを見た阿笠がパッと前に出た。
「ま、待つんじゃ!そうするべきみたいに言っているが、それはあくまで蘭君が言っとるだけじゃろう!新一君もそうだし優作君達もどう思ったのかを聞かねばならん筈じゃ!」
「・・・確かにそうね・・・どうなの?」
阿笠はそのまま慌てたように工藤家三人の考えについて聞かねばと切り出し、蘭もエドに気付くことなく頷いてから三人に視線を向ける。
「・・・貴方、どう思ったの?」
「・・・新一の言ったことを考えれば私達、特に私が家にいることは望まれないのだろう。だが有希子一人で新一と暮らすというのもエド君の話から考えればどうかという事になるだろうし、有希子が探偵として活動するというのも望まれないということを考えると・・・毛利さんが探偵であるということに新一が自分の力でやりたいということを考えれば、確かに蘭君の言う通りにするくらいしか無いだろうな」
「確かにな・・・それにおっちゃんの実力を考えると何も言わない方が巻き込まなくて済みそうだし、ヘボでも探偵なんだから立場的にはちょうどいいかもな」
「あぁ、小五郎ちゃんなら確かにね」
「なっ・・・!?」
その言葉に自分よりはまずはと優作に有希子が話題を振るのだが・・・優作から始まった工藤家三人が笑みを浮かべながらそれがいいだろうといったように口にした事に、阿笠は絶句した。三人の意見が揃ったこともそうだが、その中身が完全に有り体に聞いても小五郎の事を下の存在として見下していて使うのが当然と感じさせるように言ってしまっていることに。
「そうですよね!だったらそうしましょう!お父さんだったら私が説得しますから!」
「いや、待ってくれ。流石にどこの誰かも分からない子どもについてを毛利さんは受け入れることは出来ないだろう。だから少し設定を練って新一を受け入れやすいようにしようか」
「ぁっ・・・」
更に蘭も全くためらうことなく笑顔で意気込みを強くして話を進めようと声を上げ、優作が設定をと切り出したことに阿笠は絶句の様子のままに手を伸ばそうとするが・・・
「・・・もういいだろ、博士。つっても俺もここまでだと思っちゃいなかったがよ・・・」
「エド・・・」
その手を後ろから掴み首を横に振るエドの様子に、阿笠は複雑な表情を浮かべた。そうしたエドの表情も同じように複雑な表情を浮かべていたために。









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