いつかを変えることの代償 後編

「・・・なぁ、明智よ。これからも俺達のような奴が出てくると思うか?」
「私達のような、と言うと・・・同じように逆行してきた人ですか?」
そんな時にふと小五郎が口にした疑問に、明智はその言葉の意味を逆行者についてかと問い返す。
「あぁ・・・始めは俺は自分一人で過去に戻ってきたもんだと思ってたが、オメーが戻ってきてるのを知って高遠に安室に赤井もいるって知った・・・それでこれから先も似たような奴が出てくるんじゃねぇかって思っちまったんだ。それも俺らに関係する誰かがな・・・そしてそれが高遠に安室みたいに味方じゃなくても敵じゃないならまだともかく、俺がかつてを変えたことを恨んだりしてる奴がいたらって思うとどうにも・・・な」
「・・・成程・・・」
肯定を返しつつも小五郎が弱音といったように口にした気持ちに、明智は少し考え込むような素振りを浮かべる・・・ここに来て色々と昔の事が思い出されることが増えたこともあるが、それ以上に今はまだいいとしてもいいことばかりが続くとは思えないと小五郎が危惧していることに。
「・・・だとしても私は私です。どうあるべきかという気持ちに行動を変えるつもりはありませんよ」
「そうか・・・」
「ですが何かありましたら、遠慮なく私を頼ってください。私でよろしければ力になりますよ」
「・・・心遣いはありがてぇけどよ、流石に前も含めて年下のオメーに頼るつもりはねぇよ」
「いえ・・・こちらとしても助かってるんですよ。毛利さんがいてくれている、それだけでです」
「は?・・・俺がいるだけで?」
ただ明智は揺るがないといったように微笑を持って返すばかりか自分を頼るように言うのだが、そこから自分も助かっているとの声に小五郎は心底から意外そうに声を上げる。明智はそういった考えを持つとは思えないとばかりの様子で。
「私とて人間です。毛利さんと交流するまでは自分だけが過去に戻ってきた事に関し、少なからず孤独感を感じていました。今この世界で未来とも呼べる先を知り、生きているのは自分だけなのだと・・・そんな風に生きていく中で毛利さんに知り合い、こうして交流していることは私にとって独りではないと感じることが出来ているんです。これが安室もそうですが高遠に最初に会っていたなら、こんな気持ちにはなっていなかったでしょうね」
「あ~・・・まぁ安室に赤井は元々知り合いじゃなかったからともかくとしても、高遠と仲良くなんて明智の立場じゃ難しいよな・・・」
「えぇ・・・それに高遠も私の元に直接来るような事はまずなかったでしょうから、交流どころか展開次第では高遠だけ事実を知って私は高遠の事を知らないまま・・・なんてことも有り得たでしょうからね。その点では毛利さんと知り合えたことが私にとって幸いでした。毛利さんの接しやすい人柄もあったことでです」
「・・・んだよ・・・んなこと言われると照れちまうじゃねーか・・・」
明智はそんな疑問に自分も人間と前置きを置いた上で小五郎以外の面々と交流出来なかった場合独りのままであっただろうことに加え、小五郎の人柄だったからこそと誉めるその言葉に小五郎は若干気恥ずかしげに視線を背ける。そんな風に言われることなど小五郎にとって、あまり前世も含めて経験の無いことだっただけに。









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