自らの想う物と相手の考えることの隔たり

・・・そうして阿笠が何とも言いがたい気持ちを抱く中で時間は進み、とある日になる。






「・・・何だ?誰だ、あの子ども?」
「ん?・・・確かに、誰じゃ?」
・・・阿笠の家に食料がなく、阿笠と共にたまには食事と共に買い出しに行くのもいいだろうと二人で外出したエド。
そんな二人が雨の中で走らせた車に乗って阿笠の家に帰ってきたのだが、隣の工藤邸の前で家に入ろうとしているのかやたらと足掻いているブカブカの服に着られている頭に包帯を巻いた小学生低学年程度の子どもが目に入った。と、向こうの子どももエド達の車に気付いて車を止めるように小さな体と手を大きく動かす。
「・・・取りあえず先に俺が降りてあの子どもと話してみる。博士は車を車庫に入れておいてくれ」
「わ、分かった・・・」
エドはその姿に真剣な様子で車の扉を開けつつ阿笠に声をかけ、阿笠は戸惑いつつ頷きずかずかと子どもに歩み寄るエドの後ろ姿を見てから車の操作に集中する。



「エド!」
「・・・俺のこと知ってる?つーか呼び捨てでやたら馴れ馴れしいな、お前・・・」
・・・そうして子どもの前に来たエドだが、子どもにしても一切遠慮なく年上を呼び捨てにしなれたよう自分を呼んできたことに眉を寄せる。
「俺は工藤新一だ!お前も俺のことはよく知ってるだろ!」
「新一?・・・俺の知ってる新一はお前みたいな子どもじゃねーって言いてぇけど、見た目は昔の新一にそっくりだな・・・」
対する子どもが勢いよく新一だと名乗り上げてきたことに、エドは少し訝しみながらも考え込む。小さな頃から何度も会ってる事から、記憶を思い返して今の新一と照らし合わせると確かに似ているということに。
「・・・んじゃ聞くが、俺と新一しか知らないだろうっていう話をしてみろ。それも普通なら子どもに笑い話だとか世間話の材料に出来ねーディープなヤツをだ。その中身が本当なら信じてやる」
「えっ・・・あっ、それなら俺とお前が一緒にいて事件に初めて出会った時、それが解決した時にお前からやけに引いた目をされて大丈夫なのかって聞いたこと覚えてるか?あの時俺は別に平気だって言ったんだけど、それを聞いてお前は尚更に引いた感じになったのをよ・・・」
「あぁ、あったなそんなこと・・・」
そこで確かめるように細かく内容を狭めた質問を向けるエドだが、新一がパッと思い返しながら口にした返しの言葉に若干テンションが下がりながら頷いた。






・・・今の話だが、阿笠の近くの家に住んでいることや一歳違いの年齢と言うことからエドは新一やその幼馴染みの蘭と時折会うことがあった。

ただ最初の内はまだ良かったのだが、この幼稚園に入る前の歳の頃から既にやたらと事件と巡り会う事の多かった新一とその両親に巻き込まれる形でエドも事件に出会ったのだが・・・事件に出会うだけでも運が悪いはずなのに、そこで出会った事件が殺人事件だったのだ。

この事にエドとしては人の死など恨み辛みを抱かれただとかすれ違いがあったからなど、殺される理由があったからとは言え見たくないと前世の事もあって思っていたが、新一はエドと会う前から何度か事件に出会っていたからと言うのを差し引いても子どもとしては不自然なくらいに冷静沈着でいて・・・明らかに普通から逸脱するようなドヤ顔めかせた笑顔まで見せていたのだ。

そんな様子を見たエドが事件が終わった後に新一に話し掛けた結果が今言ったような事になるのだが、そんな感性と考え方を小さい頃から持っている新一に引いたのである。まだ普通の時ならいざ知らず、事件が起きて面倒ごともそうだが人の死に対して笑えると言うことに・・・









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